Google Cloud 導入事例:
株式会社ミスミグループ本社 様

800垓に及ぶ 商品バリエーションの取引を支える 基幹システムを、マイクロサービスで実現
~ Google Cloud / AWS の マルチクラウドにまたがる API 群を Anthos / Apigee で 統合管理 ~

- 2023/03/16

株式会社ミスミグループ本社 様(以下「ミスミ」、敬称略)は、あらゆる業界で加速する自動化装置の製造や活用に係わる インダストリアル・オートメーション産業(以下、IA 産業)の 非効率を解消する会社です。このたび、事業やサービスをさらに発展させるため、基幹システムを世界の先進・先端技術によって刷新。成長を加速させる基盤の構築をテーマに、ビジネス変化に素早く対応できる マイクロサービス アーキテクチャを採用しました。システム基盤には、Google Cloud と AWS の マルチクラウドを選択し、事業継続性の向上にも 同時に取り組んでいます。

これらの取り組みについて、共同でシステムを開発した 株式会社野村総合研究所(以下「NRI」)の インフラリーダーを交えて、お話を伺いました。

写真左から、ミスミの 蔡 旭 氏、石原 昌尚 氏、里井 優介 氏、NRIの 田中 穣 - Google Cloud 導入事例: 株式会社ミスミグループ本社 様

- 写真左から、ミスミの 蔡 旭 氏、石原 昌尚 氏、里井 優介 氏、NRIの 田中 穣。



導入の背景・経緯

従来の基幹システムによる制約が 経営リスクになる可能性

ミスミは、ものづくりに欠かせない機械部品や金型用部品、工具・消耗品などを 99%以上の納期遵守率で 顧客に提供することで、世界の IA 産業を支えています。EC サイトで 注文可能な商品は ミクロン単位でサイズ指定できるため、商品バリエーションは 800垓(1兆の 800億倍)にも及びます。それらの商品の供給が途絶えれば 顧客の事業が止まってしまう、ものづくり企業にとっての生命線といっても過言ではありません。

そんな ミスミの これまでの成長を支えてきた基幹システムは、様々な顧客の要望や業界の変化に対応してきたことで肥大化し、複数のシステムが同じような機能を保持、多重メンテナンスが必要、複数のシステムを同時リリースしなければならないなど、開発スピードに対する負の影響が大きくなっていました。

「ミスミは、お客様の時間価値を最大化することを ミッションとしています。しかし、業界が大きな勢いで変化している状況のなか、このままでは 様々な課題を抱えるお客様に対応できなくなるのではないか。そのようなリスクを深刻な問題として認識したことから、基幹システムのアーキテクチャ変更という大規模な取り組みを始めるに至りました」。そう語るのは、アーキテクチャ変更のインフラ全体を取りまとめている 石原 昌尚 氏です。「新たな基幹システムには マイクロサービス アーキテクチャを採用し、機能を集約して開発工数を減らすことを目指しました。マイクロサービス化した ビジネスロジックは、呼び出し元の 各アプリケーションが 自由に組み合わせて使えるようにしており、各地の現地法人や特定のお客様からいただく多種多様な要望に対して スピーディに対応できるようにしています。また、仮に障害が発生しても その影響範囲を最小限に留めて リカバリまでの工数を極小化することも狙いとしています」

さらに、先進技術の取り込みという観点から、Google Cloud と AWS の マルチクラウド化にも挑戦しました。複数のクラウドサービスを利用することで、一部のクラウドサービスに障害が起こっても 業務全体が停止するのではなく、部分的に業務が継続できる環境を構築することにしたのです。それによって、特定のクラウド技術へ依存することなく、それぞれの進んだ技術を適材適所で取り入れられるようにもなりました。

ミスミの 石原 昌尚 氏 - Google Cloud 導入事例: 株式会社ミスミグループ本社 様

- ミスミの 石原 昌尚 氏。



導入の概要・ポイント

マルチクラウド上の API 管理に Anthos / Apigee を採用

新しい基幹システムの API 群は、Google Cloud と AWS にまたがります。Google Cloud と AWS の コンテナ環境を統一的に管理できる Anthos を導入し、マイクロサービスを開発。Google Cloud と AWS にまたがる API 群を効率的に管理するため、Apigee ハイブリッドを導入しました。

「Google Cloud と AWS という 2つのサービスを使う場合、極端に言えば 二重メンテナンスが必要になります。そこで、コンテナ管理基盤 Anthos を使うことで、マルチクラウドの コンテナ環境を 一元管理できるようになりました。また マイクロサービス化する上では、API の管理が 非常に重要になります。そのため、API 管理基盤 Apigee が採用している グローバル標準仕様 OpenAPI Specification に則って インタフェースを標準化し、API の提供・利用の効率化を図りました」(石原)

開発現場における マイクロサービス化の恩恵は大きく、リリース頻度は格段にアップしています。従来はシステム間で足並みを揃えるため、四半期ごとに 一斉リリースしていました。現在は、毎日リリースすることさえ可能になっています。さらに、耐障害性を標準設計として サービス横断で組み込み、システム間で障害が連鎖しないよう、障害影響の極小化にも成功しています。今回のプロジェクトで アーキテクチャ全体の統制や性能テストの取りまとめを行った 蔡 旭 氏は、「マイクロサービスで疎結合にしたことで、機能改修に当たっては 基本的にそれぞれが担当している マイクロサービス内で完結できるようになりました。当然ですが改修スピードも大幅にアップしています」と、今回の仕組みに手応えを感じているようです。

ミスミの 蔡 旭 氏 - Google Cloud 導入事例: 株式会社ミスミグループ本社 様

- ミスミの 蔡 旭 氏。


Apigee での API 管理に加え、認証・認可などの 共通アプリケーションを担当した 里井 優介 氏は、「以前はシステムごとに共通アプリ機能を持っていたことで機能重複が発生し、開発や運用のコストが膨らんでいましたが、Apigee による認証機能を導入し、かつ 標準化することで 開発効率の向上を図ることができました。シングルサインオンの実現によって、ユーザーの利便性も上がったのではないかと思います」と 語ってくださいました。

ミスミの 里井 優介 氏 - Google Cloud 導入事例: 株式会社ミスミグループ本社 様

- ミスミの 里井 優介 氏。



導入の効果、今後の展望

IaC / APM の導入により 対応スピードも 大幅アップ

先進・先端技術の取り込みという観点から、今回のプロジェクトには ほかにも 2つの大きなテーマがありました。その一つは IaC (Infrastructure as Code)を 全面導入し、大規模なインフラ環境を 一斉構築することです。数十にも及ぶシステムを同時に立ち上げるにあたっては、クラウドサービスの コンソールを 人の手で操作していては 時間がかかり過ぎます。そのため標準の設計を定義し、それを適宜 パラメータで横方向に自動構築できるようにしました。30 近いシステムの 新しいインフラ環境を短期間で構築できるようになり、プロジェクトの状況に応じて 柔軟にインフラ環境を構成できるようになりました。

また、もう一つのテーマは、システムの可観測性を高めることです。サービス間の連携が増える マイクロサービスでは、障害発生時の原因究明や性能面の改善スピードを上げるために、APM (Application Performance Monitoring)が 欠かせません。IaC で 自動構築するなかで、モニタリングの仕組みを横断的に導入しました。これについて、NRIの 田中 穣は、「処理シーケンスを可視化し、どこからどこが呼び出されているのか、どこで時間がかかっているのか、どこで通信が止まっているのか といったファクトを集約して見られる仕組みを取り入れました。これによって障害の切り分けが容易になり、障害が解消されるまでの時間も 大幅に削減されました」と話します。同じデータを見ながら会話ができるため チーム間の意思の疎通も容易になり、IT 部門の工数削減に 大いに貢献しているようです。

NRIの 田中 穣 - Google Cloud 導入事例

- NRIの 田中 穣。


石原 氏は、今回のプロジェクトの経験と将来の展望について、インタビューの最後に 次のように語ってくださいました。

「ミスミが販売している製品は IA 産業に欠かせないものであり、お客様の成長と ミスミの成長は 連動しています。そして、ミスミの成長と 我々 IT 部門の成長も 密接に連動しています。今回の取り組みでは、絶えず進化を続ける IT 関連技術を ミスミに取り込むことで、我々の技術水準を高めていくことも 副次的なテーマとしています。我々は これからも技術の進化にコミットし続けますし、ミスミで働くエンジニアにとっても 自分自身と会社の成長がつながっていることを感じられる場所にしていきたい。今回の基幹システム刷新プロジェクトにも その思いを込めました。世界中の新しい技術に挑戦できる魅力的な職場なので、IT で 成長したい、IT で 会社や製造業を成長させたいという方には、ぜひ一緒に挑戦して欲しいと願っています」



企業紹介




  • 株式会社ミスミグループ本社(MISUMI Group Inc.)

    株式会社ミスミグループ本社
    - MISUMI Group Inc.

    オートメーションの現場で必要とされる機械部品や工具・消耗品などをグローバル 33万社以上に販売しています。製造機能を持つメーカーと他社ブランド品を販売する商社としての顔を併せ持つユニークな事業モデルと、それを支える IT や生産・物流などの事業基盤により「グローバル確実短納期」を実現し、お客さまの利便性向上に貢献しています。

    ・株式会社ミスミグループ本社 ※外部サイトへ




事例に関連する Google Cloud のプロダクト

Anthos  
- アプリ モダナイゼーション プラットフォーム -

Anthos は、既存のアプリをモダナイズし、新たなアプリを構築するためのプラットフォームです。クラウド環境や オンプレミス環境で、一貫性のある開発と運用を行うことができます。

また、Anthos は ハイブリッドクラウド環境や マルチクラウド環境における 開発と運用のためのプラットフォームとしても活用することが可能です。クラウドファーストが提唱される時代に、"Write once, run anywhere" (WORA: 1度書いただけで どこでも動かせる)を実現するプラットフォームとして、2019年から Google Cloud が提供しているサービスになります。

・Google Cloud / Anthos ※外部サイトへ

・Google Cloud / Anthos のドキュメント / Anthos の概要 ※外部サイトへ

・atlax ブログ / ハイブリッドクラウド、マルチクラウドという選択肢 - Anthos 活用 -

Anthos や Anthos Config Management 機能のイメージ図

Apigee  
- クロスクラウド API 管理プラットフォーム -

Apigee は、API の開発と管理を行うためのプラットフォームです。あらゆるユースケース、環境、スケールに対応する API を 構築・管理・保護します。プロキシレイヤを サービスのフロントにして、Apigee は バックエンド サービス API の抽象化、または ファサードを提供し、セキュリティ、レート制限、割り当て、アナリティクスなどの機能を提供します。

また、Apigee ハイブリッドは、ハイブリッド デプロイ モデルの API プロキシを開発し、管理するためのプラットフォームです。ハイブリッド モデルには、クラウドで Apigee がホストする管理プレーンと、サポートされている Kubernetes プラットフォームに ユーザーがインストールして管理する ランタイム プレーンがあります。

・Google Cloud / Apigee ※外部サイトへ

・Google Cloud / Apigee のドキュメント / Apigee について ※外部サイトへ

・Google Cloud / Apigee ハイブリッド ※外部サイトへ

・Google Cloud / Apigee のドキュメント / Apigee ハイブリッドとは ※外部サイトへ



NRIにおける クラウドの取り組み

atlax for Google Cloud

野村総合研究所(NRI)の「atlax for Google Cloud」では、DX に関する コンサルティング、および Google Cloud 導入の検討支援から システムの設計・構築・運用まで、一括でご支援します。

■ 主なサービスメニュー
- Cloud Modernization … Google Cloud の先進技術を活用した IT 基盤サービス
- Application Modernization … DevOps を実現するための インテグレーションサービス
- Data Driven / Marketing Analytics … ビッグデータ技術を活用した データ分析・マーケティングソリューション
- Digital Workplace … 次世代コンタクトセンター、新しいコラボレーションの実現

・atlax / クラウドの取り組み / atlax for Google Cloud ※カテゴリーTOPページ

・atlax for Google Cloud / 主なサービスメニュー

atlax for Google Cloud



関連リンク・トピックス

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