AWS 導入事例:
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社 様
ビッグデータを 蓄積・分析するための 基盤を AWS 上に構築
~ 自動車走行データなどを 有効活用し、社会課題の解決に貢献 ~
- 2024/11/14
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社 様(以下「あいおいニッセイ同和損保」、敬称略)は、2018年に テレマティクス自動車保険の販売を 開始しました。2024年3月時点での契約台数は 190万台を超え、これまでに 大量の自動車走行データが 蓄積されています。2021年からは これらのデータを有効活用するために ビッグデータ分析基盤の整備を進め、そこから 新たなサービスが 次々と生まれています。
この取り組みについて、ビッグデータ分析基盤の基礎となる IT インフラと 技術サポートを提供している 株式会社野村総合研究所(以下「NRI」)の担当者を交え、お話を伺いました。
- 写真左から、あいおいニッセイ同和損保の 加賀谷 侑吾 氏・永松 平 氏、NRI の 浜崎 佑樹・小島 伸彦。
導入の背景・経緯
ビッグデータを活用するための 専用環境を構築
テレマティクス保険は、ドライバーの 運転データを リアルタイムで 収集・分析し、その データを基に 保険料を設定する 自動車保険です。ドライブレコーダーや GPS、加速度センサー、通信装置などを使用して、走行距離、運転速度、地域、時間帯、急ブレーキや 急ハンドルなどの データを収集します。あいおいニッセイ同和損保では、これらの データを 保険料の算出だけでなく、保険サービスの高度化や 保険分野を超えた データビジネスの創出に生かすため、大量のデータを蓄積し、それを分析することに特化した 新たな基盤を構築しました。
「テレマティクス保険用に ビッグデータを扱う基盤は 以前からありましたが、万が一の影響の大きさを考えると、その基盤を使うのは難しく、専用の分析基盤が必要であるとの 結論に至りました」と語るのは、このプロジェクトで 中心的役割を担った デジタルビジネスデザイン部 課長補佐の 永松 平 氏です。「社内に蓄積された データだけでなく、社外から得られる データも組み合わせて 様々な課題解決に つなげるためには、基幹業務に影響を与える恐れがなく、柔軟に利用できる システムが必要でした」
分析対象となる データは膨大であり、データの構造や管理体系も異なります。データハンドリングの難しさに加え、扱う情報の性質上、セキュリティ対策も 通常以上に気を遣う必要がありました。これらの要素を考慮した
結果、ビッグデータ分析基盤の中核として NRI の データ分析基盤プラットフォームを 採用することに 決定しました。
- あいおいニッセイ同和損害保険株式会社 デジタルビジネスデザイン部の 永松 平 氏。
導入の概要・ポイント
スモールスタートで、要件の変化に 柔軟に対応
NRI の データ分析基盤プラットフォームを 採用した理由について、永松 氏は「セキュリティ、効率性、拡張性の バランスが 優れている点」を 挙げています。「自分たちで環境を構築することも検討しましたが、セキュリティ要件を 一つ一つ満たすのは 非常に困難でした。そのため 外部のサービスを探したのですが、セキュリティを強化すればするほど、利用者の自由度が低下するという ジレンマがありました。しかし、NRI の プラットフォームは、セキュリティは しっかり担保されている 一方で、AWS の機能を自由に使うことができます。データサイエンティストにとって、クラウドの サービスを制約なく使えることは重要で、実際に ストレスなく利用してもらえていると感じています。また、マルチアカウント構成に なっているため、システム管理、データ蓄積、分析など、部門ごとに環境を分け、内部統制を しっかり確保できます」
複数アカウントの 一元管理には AWS Organizations を利用し、各アカウントに適用される権限の上限を SCP (サービスコントロールポリシー)で 設定しています。さらに、AWS Security Hub を活用して、これらの アカウントの セキュリティ状況を 一括で監視し、コンプライアンスの状況を 統合的に チェックしています。
ビッグデータ分析基盤の開発と運用については、最初から フルセットで準備するのではなく、データ利活用の拡大に合わせて システムを成長させる方針を取りました。スタート時点では 自動車走行データの蓄積だけが決まっており、他に どのようなデータを追加するのか、どのような分析を行うのかは、状況に応じて変化することが 考えられたからです。そのため、2021年6月の運用開始以降も、ELT 処理の性能向上や 顧客データとの連携など、様々な改善が続けられています。NRI の 浜崎は、「データ分析を いろいろな用途で利用したいと伺っていましたが、明確な要件が定まっていなかったため、まずは スモールスタートで始め、必要に応じて機能を追加していくことにしました」と 話します。実際に 途中で方針が変更されることもありましたが、「要件が完全に固まっていない状況でも、できることから進めてもらえたので 非常に助かりました」と 永松 氏は 評価しています。
- 株式会社野村総合研究所(NRI)の 浜崎 佑樹。
導入の効果、今後の展望
社会課題の解決に つながる サービスを創出し、
今後は 生成 AI の利用も 検討中
これまでに ビッグデータ分析基盤を活用し、地方公共団体の 交通安全対策の 立案・効果検証を支援する「交通安全 EBPM ※ 支援サービス」や、目視では判別しにくい 路面の損傷箇所を 検出・可視化し、道路の維持管理業務を サポートする「路面状況把握サービス」など、多くの活用事例が生まれています。社内での注目度も高く、マーケティングや コールセンター、サステナビリティ推進など、様々な部署が 分析基盤を利用して、それぞれの業務に活用する動きも 始まりました。永松 氏とともに デジタルビジネスデザイン部で業務に携わる 加賀谷 氏は、「基幹システムの稼働率に影響を与えずに データ分析を行えるのは、社内データの利活用において 非常に大きな アドバンテージだと思います」と語ります。今後は、プログラミング不要で利用できる アプリケーションの整備など、利用者の裾野が さらに広がるような施策を打ち出す予定です。
※ EBPM : Evidence-Based Policy Making (エビデンス ベースト ポリシー メイキング)の 略称で、証拠に基づく 政策立案のこと。政府にて推進されており、政策効果の測定に 重要な関連を持つ 情報や 統計等の データの活用が求められている。
- あいおいニッセイ同和損害保険株式会社 デジタルビジネスデザイン部の 加賀谷 侑吾 氏。
最後に 永松 氏は、「生成 AI の利用も検討しており、約款をはじめとした文書や 過去の判例などを読み込ませる アイデアも 出てきています。また、テレマティクス保険自体の アップデートにも 活用できるのではないかと思っています。もともと社会課題の解決を目指して構築した基盤ですが、今や 社内で重要な位置を占めるまでに 成長しました。これから 新しいプロダクトをつくる際にも、この基盤を フル活用していきたいと考えています」と、今後の展望を語ってくれました。
企業紹介
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あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
- Aioi Nissay Dowa Insurance Co., Ltd.MS&ADインシュアランスグループの 一員として、中核である 損害保険事業を担う。「まだ誰も知らない安心を、ともに。」を キャッチコピーとする「CSV×DX ※」により、基本戦略である「先進性」「多様性」「地域密着」を推進し、安心・安全で 快適な社会の実現に挑戦する。
※ CSV×DX : CSV (社会との共通価値の創造)と DX (デジタルトランスフォーメーション)を 組み合わせた造語。
関連する AWS の 製品、ドキュメント
AWS Organizations
AWS Organizations では、複数の AWS アカウントを ポリシーベースで 管理できます。Organizations が、アカウントの グループの ポリシーを より簡単に管理し、アカウントの作成を 自動化するのに どのように役立つかを学びます。
・AWS Organizations - AWS アカウント全体の 一元管理 - ※外部サイトへ
AWS Security Hub
AWS Security Hub を使用すると、セキュリティの ベストプラクティスの チェックを自動化し、セキュリティアラートを 単一の場所と形式に集約し、すべての AWS アカウントで 全体的な セキュリティの体制を把握することができます。
・AWS Security Hub - 統合された セキュリティ & コンプライアンスセンター - ※外部サイトへ
サービスコントロールポリシー (SCP)
サービスコントロールポリシー(SCP : Service Control Policy)は、組織内の アクセス許可を管理するために使用できる 組織ポリシーの 一種です。SCP は、組織内の IAM ユーザーと IAM ロールが利用できる 最大アクセス許可を 一元的に制御できます。SCP は、アカウントが 組織の アクセスコントロールガイドラインの範囲内に収まるようにするのに 役立ちます。
・AWS Organizations および AWS Account Management の ドキュメント / サービスコントロールポリシー (SCP, SCPs) ※外部サイトへ
ELT (抽出、ロード、変換)
ELT (抽出 / Extract、ロード / Load、変換 / Transform)と ETL (抽出、変換、ロード)は、分析のための 2つの データ処理アプローチです。大規模な組織には、アプリケーション、センサー、IT インフラストラクチャ、サードパーティパートナーなど、業務の あらゆる側面から 数百 または 数千もの データソースがあります。分析や ビジネスインテリジェンスに役立つようにするには、この大量の データを フィルタリング、ソート、クリーニングする必要があります。
ETL アプローチでは、一元的な統合を行う前に、一連の ビジネスルールを使用して 複数の ソースからの データを処理します。ELT アプローチでは、データを そのままロードし、ユースケースや分析の要件に応じて 後の段階で変換します。ETL プロセスでは、最初に より多くの定義が必要です。ターゲットの データ型、構造、関係を定義するには、最初から分析が必要となります。データサイエンティストは 主に ETL を使用して データウェアハウスに レガシーデータベースを ロードしますが、現在では ELT が標準になっています。
・AWS / ETL と ELT - データ処理アプローチ間の違い - ※外部サイトへ
関連ソリューション・サービス
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関連リンク(テレマティクス、 EBPM、ビッグデータ分析基盤)
・あいおいニッセイ同和損保 / テレマティクス ※外部サイトへ
・2021/10/25 データビジネスを加速させる ビッグデータ分析基盤を 共同で構築(PDF) ※NRIサイトへ
NRI の AWS 導入事例・特別対談
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野村総合研究所(NRI)は、AWS プレミアティア サービスパートナーです。多数の顧客エンゲージメントや 幅広い経験、顧客との フィードバックや サクセスストーリーの収集を通じて、2013年に 日本で初めて認定されて以降、12年連続で AWS プレミアティア サービスパートナーに 認定されています。
また NRI は、「AWS 金融サービス コンピテンシー」 「AWS DevOps コンピテンシー」 「AWS 移行 コンピテンシー」 「AWS セキュリティ コンピテンシー」 「AWS Oracle コンピテンシー」 「AWS SAP コンピテンシー」 「AWS Generative AI コンピテンシー」を取得しており、コンサルティング、システム開発・運用、アナリティクス、生成 AI といった 幅広い分野で、お客様の課題解決に AWS を活用し、DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現に 取り組んでいます。
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