AWS 導入事例:
ヤマハ発動機株式会社 様
モバイルアプリを サーバーレス、アジャイルで開発
- 2022/02/21
ヤマハ発動機株式会社 様(以下「ヤマハ発動機」、敬称略)は、顧客接点を拡大することを目的に、ヤマハバイクのユーザーのための情報を的確なタイミングで提供できるモバイルアプリを、世界に先駆けてインドネシアとベトナムでリリースしました。
アジャイル開発を採用し、AWS(Amazon Web Services)を活用して サーバーレスで設計・構築した今回の取り組みについて、共同でシステムを開発した 株式会社野村総合研究所(以下「NRI」)側の担当者を交えて、お話を伺いました。
- 写真左から、NRIの 森山 智之、ヤマハ発動機の 村松 蒼介 氏、ヤマハモーターソリューションの 平野 智輝 氏、島沢 竜平 氏
導入の背景・経緯
ユーザーと直接つながるための モバイルアプリを開発
「感動創造企業」を企業目的とするヤマハ発動機は、海外市場での売上が約9割を占めるグローバル企業であり、主力製品であるバイクのユーザーが世界中に存在しています。しかし、バイクを販売するのは世界各地のディーラーであるため、ユーザーと直接的なつながりを持つのが難しいことが長年の悩みでした。
「今までのヤマハ発動機とお客様の関係では、バイクを売った後に関係を保ち続けることができませんでした。お客様にバイクを購入いただいた後も、お客様のバイクライフに伴走し、わくわくするような体験をし続けていただくことが私たちの目標であり、そのための一つのチャネルとして重要になってくるのが モバイルアプリだと考えました」。そう語るのは、ヤマハ発動機 ランドモビリティ事業本部 MC事業部 グローバルブランディング統括部 MCつながる推進グループの 村松 蒼介 氏です。今回リリースしたモバイルアプリ「My Yamaha Motor」のプロダクトオーナーとして、開発プロジェクトを統括されました。
「アプリを通じて、お客様が最適なタイミング・内容の情報を受け取ること。必要な点検に気づいたり、イベントにエントリーしたりすること。そういった体験の中で、お客様の感動につながるような価値を感じていただき、ヤマハを選んで良かったと思っていただけたらと考えています。ヤマハのファンで居続けていただき、『次もヤマハが良いな』と考えていただけたら、これほど嬉しいことはありません」
ユーザーは「My Yamaha Motor」を利用することで、保証期間や定期点検の時期など、愛車を管理するために必要な情報を簡単に入手することができますし、点検の時期が近づくと通知が届き、ディーラーの検索やサービスの予約を行うこともできます。また、ヤマハ発動機側からはメンテナンスクーポンの配布やイベントの告知など、需要を喚起する施策にも活用することが可能です。ヤマハ発動機では、バイクに取り付けられたセンサーからの情報をモバイル機器に送る「Yamaha Motorcycle Connect」という別のアプリもリリースしていますが、将来的にはこの 2つのアプリを連携して、より高い価値の提供を実現したいと考えています。
- ヤマハ発動機の 村松 蒼介 氏
導入の概要・ポイント
UX と リリースまでのスピードを重視して アジャイル開発を採用
アプリ開発に当たっては、リリースまでの期間が半年しかないことや、イニシャル・ランニングコスト面の制約、また将来的なパフォーマンスの懸念から、いずれの制約も満たせる AWS のサーバーレス構成を採用。さらに、ヤマハ発動機のグローバルアプリ開発として、ほぼ初めてアジャイルを採用することになりました。その理由について、プロジェクトの技術的な側面をリーダーとして取りまとめた ヤマハモーターソリューション株式会社(以下「ヤマハモーターソリューション」、敬称略) デジタルソリューション事業部 コトサービス推進部 コネクティッド推進グループの 平野 智輝 氏は、次のように語ります。
「グローバルに展開する BtoC のアプリをつくるのは初めての経験で、スタートの時点では不明瞭な要件もありましたし、開発中に優先順位が変わることも想定されました。これまでは、ウォーターフォールで事前に要件を固めて進めるやり方の経験しかなかったため不安はありましたが、お客様が直接使うアプリの開発には操作感を逐次チェックできるアジャイルがマッチしていると考え、思い切ってチャレンジすることにしました。リリース後も、月に一度のペースでバージョンアップしていますから、短期のリリースサイクルで回せるアジャイルを選択してよかったと思います」
本プロジェクトの NRI側のマネージャーである 森山 智之 は、「『My Yamaha Motor』は、ヤマハ発動機の海外拠点を巻き込んで開発したアプリです。一方で、NRIもベトナムのオフショア拠点で開発メンバーをコントロールしながら業務を進めました。これだけ多くのステークホルダーがいる中でアジャイルを採用して成功した国内の事例はまだ少ないはずですし、今回は非常にうまくいった事例ではないでしょうか」と話します。
- ヤマハモーターソリューションの 平野 智輝 氏
※ UX:User eXperience(ユーザー・エクスペリエンス)の略称で、ユーザーの体験価値のこと。
※ アジャイル(agile)開発:ビジネスの戦略から実現までの アジリティ(agility・俊敏性)を高めるための手法。短い開発サイクルを繰り返していく スピード感のある開発プロセスのこと。
導入の成果、今後の展望
アジャイルの経験を通じて 社内の開発部隊の意識も変化
「My Yamaha Motor」は、2020年にインドネシアで、2021年にはベトナムでリリースされ、順調にユーザー数を増やしています。アプリストアのレビューやユーザー調査での評価も高く、今後は新たな国への展開も視野に入ってきています。
「バイク購入後のお客様とコミュニケーションがとれることは、私たちにとって革新的です。これまでは、お客様と私たちの接点は、バイクを購入する前のせいぜい 3カ月と、年に数回のメンテナンスの瞬間くらいでした。国によっては、買った当日にそのまま乗って帰ったり、自身でメンテナンスを行う人もいたりするので、私たちが関わることができる時間は本当に短かったのですが、このアプリによって次のバイクに乗り換えるまでの長い時間を味方に付けることができるようになりました。その間にデータを通じてお客様のことを深く知りながらサービスを改善し続けることで、バイクと共に過ごす時間を豊かにするお手伝いをできるチャンスが得られたことを、とても嬉しく思っています」(村松 氏)
「これまでヤマハ発動機の業態は、BtoC ではなく BtoBtoC でした。お客様と自分たちの間にディーラーを挟んでいるため、ユーザーが見えにくかったのですが、このアプリの導入ですごく可視化されるようになってきたという感じがしています」(平野 氏)
今回のアプリ開発において、社内のインフラ系や他システムとの調整の第一線で活躍された ヤマハモーターソリューション デジタルソリューション事業部 コトサービス推進部 コネクティッド推進グループの 島沢 竜平 氏は、最後に次のようにまとめてくださいました。
「NRIと共同でアプリをつくった今回の経験は、私たちのマインドが変わる契機にもなりました。最初のインドネシア版を開発する際は、従来のウォーターフォール同様に要望だけ出して、ユーザーテストは最後にやれば良いという感覚があったため、こちらからの要件提示が遅れるなど、うまくいかない部分がありました。そこでの反省を踏まえて、ベトナム版のときには NRIからアジャイルなりのやり方を貪欲に吸収し、それによって私たちの意識も変わりました。技術的なサポートをいただけたのも もちろんですが、その部分が一番大きな収穫だったと思います。こちらの曖昧な要件に対しても真意をくみ取って形にしてくれた NRIと一緒に、今後も『My Yamaha Motor』をもっと良いアプリに育てていきたいです」
- ヤマハモーターソリューションの 島沢 竜平 氏
企業紹介
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ヤマハ発動機株式会社
- Yamaha Motor Co., Ltd.ヤマハ発動機は、パワートレイン技術、車体艇体技術、制御技術、生産技術を核とし、二輪車や四輪バギー、電動アシスト自転車などのランドモビリティ事業、ボート、船外機等のマリン事業、サーフェスマウンターやドローンなどのロボティクス事業、さらには、ファイナンス事業など多軸に事業を展開、世界30カ国・地域のグループ140社を通じた開発・生産・販売活動を行い、企業目的である「感動創造企業」の実現に取り組んでいます。今や、当社製品は 180を超える国・地域のお客さまに提供され、連結売上高の約9割を海外で占めるに至っています。
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※ ERP:Enterprise(企業)・Resource(資源)・Planning(計画)の略で、企業の経営資源を一元に管理し、企業全体の最適化を実現するための経営手法。ERP を実現するための情報システムは ERP ソフトと呼ばれ、生産、調達、在庫、販売、財務・管理会計、人事などの機能が含まれる。
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野村総合研究所(NRI)は、AWS プレミアティアサービスパートナーです。多数の顧客エンゲージメントや幅広い経験、顧客とのフィードバックやサクセスストーリーの収集を通じて、2013年に日本で初めて認定されて以降、9年連続で AWS プレミアティアサービスパートナーに認定されています。
また NRIは、「AWS DevOps コンピテンシー」のほかに、「AWS 金融サービスコンピテンシー」「AWS 移行コンピテンシー」「AWS セキュリティコンピテンシー」「AWS SAP コンピテンシー」「AWS Oracle コンピテンシー」を取得しており、コンサルティング、システム開発・運用、アナリティクスといった幅広い分野で、お客様の課題解決に AWS を活用し、DX の実現に取り組んでいます。
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