ランサムウェアの主要感染経路5選!企業の隙を突く侵入ルートと経路別の万全な予防策
近年、企業のDX化やハイブリッドワークの普及に伴い、サイバー攻撃の手口は驚くほど多様化しています。なかでもランサムウェアの脅威は深刻ですが、これらを防ぐためには「攻撃者がどこから、どのように侵入してくるのか」という経路(アタックサーフェス)を正確に把握することが不可欠です。
警察庁などの公的機関のデータを見ても、ランサムウェアの感染原因は特定のルートに集中していることが分かっています。本コラムでは、国内企業が特に狙われやすい「5つの主要な感染経路」を徹底解説し、システム担当者が今すぐ講じるべき経路別の予防策を具体的に提示します。
参考:「マルウェア「ランサムウェア」の脅威と対策(脅威編)」※警視庁サイトへ
目次
1. ランサムウェアの主要な感染経路:巧妙化する5つの侵入ルート
企業の防衛線を突破する、サイバー攻撃者のアプローチ
サイバー攻撃者は、企業の強固な正面玄関(強固なファイアウォールなど)を避け、アップデートが放置された機器や、従業員の「うっかりミス」、セキュリティの薄い関係会社など、「最も弱い環(わ)」を探し出して侵入を試みます。
万全な防御体制を敷くためには、自社のネットワークに存在するあらゆる「隙」をあらかじめ潰しておく必要があります。以下から、特に被害の多い5つのルートとその対策を詳しく見ていきましょう。
2.【感染経路1】VPN機器・ネットワーク境界の脆弱性

【詳細】なぜVPNがランサムウェア感染経路の「最多」なのか?
国内のランサムウェア被害原因において、毎年圧倒的な最多の割合を占めているのが「VPN(仮想専用線)機器等からの侵入」です。 テレワークの普及に伴い多くの企業がVPNを導入しましたが、「ファームウェアの脆弱性(バグ)を修正せず放置していた」「過去に漏洩したID・パスワードがそのまま悪用された」といった管理不足の機器が、攻撃者にとって格好の標的となっています。
【予防策】機器のファームウェア管理と認証情報の厳格化
・迅速なパッチ適用:
メーカーから脆弱性情報が公開された際は、重要度に応じて即座に修正プログラム(パッチ)を適用する運用フローを確立する。
・多要素認証(MFA)の必須化:
IDとパスワードだけの認証は突破されるリスクが高いため、クライアント証明書やワンタイムパスワード等を用いた多要素認証を必ず導入する。
※参考:IAMソリューション
・不要な機器の停止:
使用していない古いVPNアカウントや拠点間接続機器は、放置せず確実に廃止・クローズする。
3. 【感染経路2】リモートデスクトップ(RDP)の認証突破

【詳細】テレワーク普及で激増:踏み台にされる外部接続窓口
リモートデスクトップ(RDP)とは、外部のPCから社内のWindowsサーバやパソコンを遠隔操作するための機能です。
利便性が高い反面、インターネット上にRDPポート(3389等)を直接公開していると、攻撃者から「総当たり攻撃(ブルートフォース攻撃)」や「リスト型攻撃」によってパスワードを破られ、ネットワーク内部へ容易に侵入されてしまいます。
【予防策】不要なRDPアクセスの遮断と多要素認証(MFA)の導入
・インターネットへの直接公開禁止:
RDPポートをインターネットに向けて直接開放しない。外部から接続させる場合は、必ずセキュリティの確保されたVPNや踏み台サーバを経由させる。
・アカウントロックアウトの設定:
一定回数ログインに失敗したアカウントを自動的に一時凍結(ロックアウト)する設定を行い、総当たり攻撃を防ぐ。
4. 【感染経路3】フィッシングメール・改ざんされたWebサイト

【詳細】日常業務に潜む罠:フィッシングメールや水飲み場型攻撃
業務メールを装った「フィッシングメール」に添付されたマクロ付きファイル(Excel等)を実行したり、本文中の不正URLをクリックしたりすることで感染するクラシカルな手法も依然として健在です。
また、従業員が日頃から業務で閲覧している「正規のWebサイト」が攻撃者によって改ざんされており、サイトにアクセスしただけで裏で自動的にランサムウェアをダウンロードさせられる「水飲み場型攻撃」の被害も増えています。
【予防策】EDRによるエンドポイント監視と従業員のセキュリティ教育
・EDR(Endpoint Detection and Response)の導入:
万が一メールやWeb経由でマルウェアが端末に侵入しても、その挙動をいち早く検知して不審なプロセスを遮断する仕組みを導入する。
※参考:マネージドEDRサービス ※NRIセキュアサイトへ
・メールセキュリティの強化:
標的型攻撃メールを検知するフィルタリング機能や、SPF/DKIM/DMARCなどのドメイン認証技術を導入し、なりすましメールを排除する。
※参考:標的型メール攻撃対策 Proofpoint ※NRIセキュアサイトへ
・組織的な訓練:
定期的な標的型メール訓練を実施し、不審なファイルやURLを安易に開かない意識を定着させる。
※参考:メール訓練内製化・不審メール初動対応支援ソリューション Cofense ※NRIセキュアサイトへ
5. 【感染経路4】外部記録メディア(USBメモリなど)の接続

【詳細】物理的な侵入ルート:意識の隙を突くマルウェア感染
社内のセキュリティネットワークをどれだけ強固にしても、物理的なルートからの侵入を許しては意味がありません。 自宅のPCでマルウェアに感染したUSBメモリや外付けハードディスクを、会社のPCに「データ移行のために」と深く考えずに接続した結果、一瞬で社内インフラ全体へ感染が広がるケースです。また、保守ベンダーが持ち込んだ作業用PCが感染源になるケースも存在します。
【予防策】デバイス利用制限ポリシーの策定と安全な運用ルールの徹底
・USB利用の原則禁止と制御:
資産管理ツール等を活用し、許可されていない私物USBメモリなどの外部記録メディアをPCに接続しても認識しないようシステム側で制御する。
・専用スキャン端末の設置:
業務上どうしても外部メディアからデータを取り込む必要がある場合は、社内ネットワークに接続されていない「ウイルススキャン専用PC」で安全性を確認してから取り込む運用を徹底する。
6. 【感染経路5】サプライチェーン(委託先・子会社)経由の侵入

【詳細】セキュリティの「最も弱い環」を狙う迂回ルート
自社のセキュリティがどれほど強固であっても、取引先、システム委託先、海外子会社などのセキュリティが手薄であれば、そこが「踏み台」として悪用されます。
攻撃者はまず守りの弱い関係会社に侵入し、そこから本社のネットワークへ繋がっている常時接続回線や、信頼されたアカウントを悪用して本社インフラへと侵入(迂回ルート)してくるのです。
サプライチェーン攻撃については下記の記事でも解説しています。 「サプライチェーン攻撃の対策とは? 型・事例の整理から最新の対策要点まで解説」
【予防策】グループ・サプライチェーン全体におけるセキュリティ基準の統一
・サプライチェーン全体のセキュリティ監査:
外部委託先や子会社に対し、定期的なセキュリティチェックリストの提出や監査を行い、一定のセキュリティ水準を満たしているか確認する。
・境界防御の再定義(ゼロトラストの思想):
「身内(子会社や専用回線)からの通信だから安全」という前提を捨て、拠点間接続であっても通信を制限・監視する。
7. まとめ:単一の防御に頼らない「多層防御」の重要性
ランサムウェアの侵入経路を塞ぐためには、VPNやRDPといった「境界の防御」だけでなく、メール対策やUSB制限、そしてサプライチェーンマネジメントに至るまでの「多層防御」が欠かせません。
しかし、どれほど強固な予防策を講じても、日々進化するサイバー攻撃を「100%防ぐ」ことは不可能です。現代の企業セキュリティにおいて真に重要なのは、予防策の徹底と同時に、「万が一、これらの防衛線を突破されて感染してしまった場合の迅速な初動対応と復旧の備え」を確立しておくことです。
もしもランサムウェアに感染してしまったら、現場はどう動くべきか? 経営を止めないための具体的な初動プロセスや復旧のロードマップについては、別記事「【実録】ランサムウェア感染、その時どう動く? 経営を止めないための『初動30分』と復旧のロードマップ」を必ずあわせてご覧ください。
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