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  • NRIの先進テクノロジーに関する取り組み

    ~ 量子コンピュータ・AI 技術の ビジネス活用に向けて ~

    - 2022/09/29

    IT基盤技術戦略室



小売・製造、金融・公共をはじめ、幅広い業界において「先進技術を活用して ビジネスモデルを変革(DX)し、お客様へ価値提供していきたい」という テクノロジー活用への期待が高まっています。一方、その期待に反して、技術変化のスピードが速く、技術キャッチアップや その活用が難しいといった悩みもお聞きします。

そのような声にお応えするため、株式会社野村総合研究所(NRI)では「潜在的な 顧客ニーズ発の技術調査」「技術動向を見据えた 先進技術の早期評価」「獲得した技術の 事業適用」に 継続的に取り組んでいます。このような活動を通して、NRIは 専門知識を用いて 企業様のビジネスとテクノロジーの架け橋となり、DX 実現まで伴走します。

このブログでは、NRIで推進している 先進的な技術獲得の取り組みについて、以下の通り 複数回に分けてご紹介していきます。


NRIの先進テクノロジーに関する取り組み - 量子コンピュータ・AI 技術の ビジネス活用に向けて

NRIの先進テクノロジーに関する取り組み - 量子コンピュータ・AI 技術の ビジネス活用に向けて

- 本シリーズブログで紹介する テクノロジー領域。


今回は、「データの価値を高める 最適化計算への 量子コンピュータ適用の研究」と「コグニティブ AI 領域における MLOps 基盤実現」に関する 調査研究の成果をピックアップしています。



1. データの価値を高める 最適化計算への 量子コンピュータ適用の研究

本稿では、物流・配送といった業務を 一例として、「最適化が いかにデータの価値を高めるか?」「その中で
量子コンピュータは 将来的に どういった機能を担う可能性があるか?」を 見ていきたいと思います。

例えば、売上予測に応じて 適切な量の商材を店舗へ配送するためには、配送ルートを どのように立案すべきでしょうか? 機械学習を使って店舗が必要とする商材の量が予測できているのであれば、次は「その商材をいかに効率的に店舗に運ぶか?」が 重要となります。そこで役立つのが、最適化技術によるシミュレーションです。
一般に「利益をいかに最大化するか」もしくは「コストをいかに最小化するか」が ビジネスの論点であり、数理最適化では これらは最大化問題や最小化問題に帰着できます。

一方で、最適化計算の実用化に向けては、ビジネス制約の遵守、現実的な時間での求解が必要です。NRIでは、
お客様のビジネスを最適な状態へ導くため、実用性に重点を置いた 最適化計算の実装やノウハウの蓄積に取り組んできました。その成果として、最適解の計算が困難な問題に対して、早期に応答できるアルゴリズムを構築する技術を開発しました。

この技術を活かし、様々な業態のお客様に対して 数理最適化技術を適用したご支援を進めています。その 一部では、年間数億円規模のコスト削減効果を試算する等、労働時間・CO2 削減・コスト削減によって、お客様の収益性改善に貢献しています。

図1: 5地点を 2台の車両で巡回する場合の 最適化計算のイメージ

- 図1: 5地点を 2台の車両で巡回する場合の 最適化計算のイメージ。


ここまで述べた最適化計算は すべて従来型のコンピュータで実行されていますが、世の中には より複雑な最適化計算が必要な問題もあります。そのような問題を解決に導きうる手段の 1つとして、近年、量子コンピュータが注目を集めています。

量子コンピュータには 大別して「アニーリング型」と「ゲート型」の 2つの方式があります。アニーリング型は、最適化計算をユースケースとした事例が 多数報告されており、厳密解を求めることが難しいとされている「組み合わせ最適化」に対して、有効な解を出しうるのではないかと期待されています。一方、ゲート型は、
最適化計算以外にも、分子シミュレーションや データ探索、素因数分解などの実装が可能です。ただし、その計算規模は まだ限定的であり、国内外で基礎的な研究開発が 盛んに行われています。現在、いずれの方式も技術進化の途上にあり、ビジネス適用は 一筋縄ではいきません。しかし、時間がかかることが見込まれる技術だからこそ、ビジネス界が先んじて応用例を世に示すことが重要です。

NRIでは、量子コンピュータにおける「アニーリング型」「ゲート型」の 双方に対し、クラウドベンダー、マシンメーカー、学術機関といった 様々な関係者と連携し、検討・技術獲得を進めています。また、現状の量子コンピュータの性能を考慮して、CVRP(※)に対する 最適化計算手法の検討を進めています。それは、従来型コンピュータによるアルゴリズムと アニーリング型の量子コンピュータによるヒューリスティクスな手法を組み合わせたもので、その 一部については 特許も出願しています(図2)。今後も、先進技術の社会実装に向けて、国内外の様々な関係者と共に 歩みを進めてまいります。

図2: 特許出願中の手法の概要図

- 図2: 特許出願中の手法の概要図。


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# 量子コンピュータ # 最適化問題 # ロジスティクス

※ CVRP:Capacitated Vehicle Routing Problem の略称。様々な制約条件のもとで、複数の車両を用いて すべてのお客様をちょうど 1回ずつ訪問するような経路の中で、コストが最小のものを求める問題を VRP(Vehicle Routing Problem)と呼ぶ。
この VRP のうち、車両の容量が決まっており、お客様の要求量の総和が 車両の容量を超えてはいけないという制約をもつ問題が CVRP。



2. コグニティブ AI 領域における MLOps 基盤実現

ここ数年、コンピュータの性能向上にともなって 深層学習(Deep Learning)という ML の 一手法が発展し、画像データや音声、自然言語に対する AI の分析精度が大幅に向上しました。AI のビジネス活用事例も登場し、あらゆる業界で身近なものになりつつあります。このように注目を集める AI 技術ですが、ビジネス活用に必要なスキルは モデル開発だけに とどまりません。学習に用いるデータを安全に収集し、継続的にモデルを改善しながら、AI による判断品質を維持していくという ライフサイクル全体を管理することが求められます。

このような ライフサイクル管理を実現するために、機械学習モデルの 開発(ML)から 運用(Ops)までの プロセス全体を 円滑に管理・制御するための MLOps という考え方が広がっています。開発チームと運用チームの連携を円滑にするツールを用いて AI がもたらすビジネス価値を 迅速かつ安全にエンドユーザーに届けることを目的としています。

NRIでは、機械学習の開発と運用を 安全かつ効率的に行うための MLOps 基盤を開発しています。産業技術総合研究所が整備した「機械学習品質マネジメントガイドライン」をインプットに、MLOps 基盤に求められる 機能要件・非機能要件を整理し、システムの重要度に応じて クラウドや OSS、有償製品を組み合わせた実装方式を検討しています。

MLOps 基盤に求められる品質要件は、「AI の精度」と「責任性」の 2つに分類されます。MLOps 基盤といいますと、「AI の精度」に 関心がいきがちですが、ビジネスでは「責任性」に関する 4つの品質要件「説明可能性(XAI)」 「堅牢性」 「公平性」 「AI セキュリティ・プライバシー」も 重要になります。しかし、「責任性」実現にあたっては 技術が未成熟であり、実装方式が 未だ確立していないのが実情です。そのため NRIでは、需要が高い「説明可能性(XAI)」から 順次、アルゴリズムや実装技術の体系化と製品調査を進めています。これらの調査で得られた知見を AI ソリューションとして提供することで、お客様のビジネスにおける 安全で高品質な AI 活用の実現を目指します。

図3: MLOps 基盤に求められる 品質要件

- 図3: MLOps 基盤に求められる 品質要件。


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# AI(人工知能) # 深層学習(Deep Learning) # MLOps



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