AWS 導入事例:
NRIセキュアテクノロジーズ株式会社

国内初稼働の ERP システム「SAP S/4HANA 1511」をバージョンアップ
- 2021/09/15

NRIセキュアテクノロジーズ株式会社(以下「NRIセキュア」、敬称略)は、株式会社野村総合研究所(以下「NRI」)とともに、国内初稼働の「SAP S/4HANA」のバージョンアップを行いました。バージョンアップと併せて、基盤(AWS・OS・データベース)についても、最新化を行っています。

また、「SAP S/4HANA」の標準機能のバージョンアップアセスメント機能と、NRIの導入・エンハンス実績に基づいたアセスメント項目により、バージョンアップに伴う影響調査や、新機能の取り込みを、短期間で実現しました。移行プランニング(リリース計画)と、ダウンタイムチューニングにより、業務影響もゼロで、移行を完了しています。

AWS(Amazon Web Services)の特徴を活かして円滑に完遂した 今回のバージョンアップについて、背景や経緯を交えてご紹介します。


バージョンアップの背景・経緯

ERP システム「SAP S/4HANA」の サポートサイクルへの対応

NRIは 2010年、世界に先駆けて「SAP HANA」の導入に成功しました。さらに 2015年には、AWS 上に実装した「SAP AFS」が世界最高の SAP 処理性能を達成し、その技術力が一躍グローバルで注目されることとなりました。翌2016年には、「SAP S/4HANA」を NRIセキュアで国内初稼働させ、新たな技術標準をリードする役割を担っています。

NRIでは、「ERP が持つエンタープライズレベルのビジネス情報の集約が、経営・事業のマネージメントの遂行に重要」である一方、「さまざまなクラウドサービスの活用が、業務オペレーションのデジタル化を推進し、それにより業務効率の向上や業務全体の円滑化が図られることにも着目すべき」だと考えています。

また、ERP システム「SAP S/4HANA」は、5年がサポートサイクルとなっているため、定期的にバージョンアップを実施する必要があります。NRIセキュアでは、2016年4月に国内初稼働した現行基幹システム「SAP S/4HANA 1511」のサポート期限が迫り、バージョンアップを行う必要がありました。併せて、「バージョンアップによるダウンタイム等のための業務影響をいかに抑えるか」といった点も、課題になっていました。

※ SAP HANA(エスエイピー ハナ):大量データを高速で分析するために、SAP 社が開発した、インメモリー型のコンピューティングプラットフォームのこと。データベースの主流である RDB(リレーショナルデータベース)ではなく、カラム型データベースを採用。分析系(OLAP)だけではなく、更新系(OLTP)の処理にも適用が可能。
※ SAP AFS:SAP Apparel and Footwear Solution の略称で、ERP パッケージである SAP ERP をベースとし、アパレル業界特有の要件を満たすように設計されたソリューションのこと。
※ ERP:Enterprise(企業)・Resource(資源)・Planning(計画)の略で、企業の経営資源を一元に管理し、企業全体の最適化を実現するための経営手法。ERP を実現するための情報システムは ERP ソフトと呼ばれ、生産、調達、在庫、販売、財務・管理会計、人事などの機能が含まれる。
※ SAP S/4HANA(エスエイピー エスフォーハナ):SAP Business Suite 4 SAP HANA の略称で、カラム型インメモリーデータベース「SAP HANA」上で稼働する、業務処理と分析処理を一体化した 第4世代の ERP 製品のこと。「S/4HANA」の、S は Simple、4 は 第4世代の意味。2015年2月に発表された。


バージョンアップの概要・ポイント

バージョンアップに伴う影響調査や新機能の取り込みを
短期間で実現し、業務影響ゼロで移行を完了

2021年1月に、「SAP S/4HANA 1910」へのバージョンアップを完遂

NRIセキュアで 2016年4月に国内初稼働した「SAP S/4HANA 1511」について、2021年1月に「SAP S/4HANA 1910」へのバージョンアップを完遂しました。適用領域は、財務会計(FI)、管理会計(CO)、販売管理(SD)、在庫購買管理(MM)、プロジェクトシステム(PS)、SAP Fiori、SAPUI5 アプリケーション、SAP HANA(Calculation View)など、多岐にわたります。

「SAP S/4HANA」のバージョンアップに伴い、「SAP HANA」についても 1.0 から 2.0 へのバージョンアップを行い、それに伴う OS の最新化にも対応しました。

※ SAP Fiori(エスエーピー フィオーリ):シンプルで操作性に優れ、直感的な ユーザーエクスペリエンス(UX)を実現するビジネスアプリケーション群。
※ SAPUI5:SAP UI Development Toolkit for HTML5 の略称で、HTML5 用の ユーザーインターフェイス(UI)開発ツール。

SAP S/4HANA の標準機能であるバージョンアップアセスメントと、
NRIの導入・エンハンス知見を有効活用

■ 標準機能の影響調査と、アドオン機能の影響調査
「SAP S/4HANA」の標準機能を用いたアセスメント(評価・分析)とともに、NRIの導入・エンハンス(保守・改善)実績に基づく独自のアセスメント項目を用いて、短期間で効率よく評価を行いました。標準機能の仕様変更箇所の洗い出しや、アドオン機能のエラー箇所の洗い出しが必要ですが、「SAP が提供するアセスメント機能」と「NRIの導入・エンハンス実績に基づくアセスメント項目」を組み合わせることで、業務影響に応じた効率的なテスト計画の策定・実施を行うことができました。

初回の移行検証では、人事管理(HR)マスタを利用する「SAP S/4HANA」の他のモジュール連携が機能しないことが判明しました。「SAP S/4HANA」の標準機能を用いたアセスメントでは検出できなかった課題に直面したものの、業務影響に応じたテスト計画を策定していたことや、早めの実機検証フェーズを設けていたことが功を奏し、後続工程の立て直しが円滑に進みました。

■ 新機能の評価
標準機能やアドオン機能の影響調査と並行して、SAP の公式文書 および NRIの導入・エンハンス実績より、各種バージョンにおける新規機能について、適合性評価を行いました。既存ビジネスプロセスへ適合性の高い機能の抽出・提案・実機検証を行い、単なるバージョンアップではなく、業務ユーザの利便性向上を図りました。

リリース計画と ダウンタイムチューニングで、通常週末移行を実現

■ リリース計画の工夫
顧客環境の個別課題を洗い出すため、本番コピー環境を用意し、そこで入念な移行検証や訓練を行った結果、スムーズな移行を実現し、移行時間の短縮にもつながりました。また、AWS の特徴である、環境の複製・バックアップの容易性を活かし、パラメータチューニングによる検証を、複数かつ短期間で実現しました。

■ 移行方法の工夫
本プロジェクトでは、HANA 機能の移行も必要であり、SAP 社提供の移行ツール Software Provisioning Manager のエクスポート・インポートでは対応できなかったため、代替として、SAP HANA データベースのバックアップ・リストアによる移行を採用しました。移行要件に合わせて、移行方式を柔軟に変更して対応することが出来ました。

AWS 導入事例:NRIセキュアテクノロジーズ株式会社 - システム構成図(NRIセキュア:国内初稼働の ERP システム「SAP S/4 HANA 1511」をバージョンアップ)

- システム構成図(NRIセキュア:国内初稼働の ERP システム「SAP S/4 HANA 1511」をバージョンアップ)

※ DMZ:DeMilitarized Zone の略で、直訳すると「非武装地帯」。セキュリティの強化のために、組織の内部ネットワークと危険の多い外部ネットワーク(一般的にインターネット)の間に設置されている隔離されたネットワーク領域のこと。
※ DR:Disaster Recovery(災害復旧)の略で、大地震などの非常事態に対して事業を継続するための準備・対応策を指す。
※ API:Application Programing Interface の略で、あるソフトウェアから別のソフトウェアの“機能”を呼び出す仕組みのこと。
※ ABAP:Advanced Business Application Programming の略称で、SAP の ERP 製品等で用いられている開発言語のこと。
※ SAProuter:外部ネットワークと SAP をリモート接続するためのソフトウェアアプリケーションのこと。
※ SAP Concur:出張・経費等を管理する SAP の SaaS 製品のこと。


企業紹介


  • NRIセキュアテクノロジーズ株式会社(NRI SecureTechnologies, Ltd.)

    NRIセキュアテクノロジーズ株式会社
    - NRI SecureTechnologies, Ltd.

    野村総合研究所(NRI)グループの情報セキュリティ専門企業。

    1995年、インターネットの可能性と情報セキュリティの重要性にいち早く着目し、NRIの社内ベンチャーとしてスタート。国内外の関連資格を取得し世界レベルの研鑽に励んだスペシャリストが、金融、流通、製造など様々な業界の大手企業から官公庁に至るまで、幅広いお客様の情報セキュリティに関する課題解決を支援する。

    コンサルティングからソリューション導入、教育、運用、監視まで、お客様の情報セキュリティに関するあらゆるニーズに「ワンストップ」で対応し、安心・安全な IT 社会の実現を目指している。

    ・NRIセキュアテクノロジーズ株式会社 ホームページ - 情報セキュリティのNRIセキュア - ※外部サイトへ



事例やシステム構成図に関連する主な AWS サービス

SAP on AWS

コストと運用上のベネフィットに加えて、SAP システムとデータを AWS に移行することで、新しい可能性の領域が開きます。コストを削減するために既存の投資を引き上げてシフトすること、ネイティブ AWS サービスを使用してビジネスプロセスを最新化すること、S/4HANA で変革することを選択した場合でも、SAP on AWS で可能性を再考するためのお手伝いをします...

・SAP on AWS - SAP とアマゾン ウェブ サービス - ※外部サイト(AWSサイト)へ

SAP S/4HANA on AWS

SAP のお客様は、あらゆる規模のシステムで、SAP S/4HANA のすべての利点を AWS クラウドで活用できます。AWS のオンデマンドインフラストラクチャで、リリースまでの時間を短縮することも可能です...

・SAP S/4HANA on AWS ※外部サイト(AWSサイト)へ

Amazon Virtual Private Cloud (Amazon VPC)

Amazon Virtual Private Cloud(Amazon VPC)では、リソースの配置、接続性、セキュリティなど、仮想ネットワーク環境を完全に制御することができます。仮想ネットワークのセットアップ、管理、検証に費やす時間が短縮されるため、仮想ネットワーク内で実行されるアプリケーションの構築に集中できます...

・Amazon VPC - 仮想ネットワーク内での AWS リソースの起動 ※外部サイト(AWSサイト)へ


Amazon Virtual Private Cloud (Amazon VPC)


AWS Direct Connect

AWS Direct Connect は、プレミスから AWS への専用ネットワーク接続の構築をシンプルにする、クラウドサービスソリューションです。AWS Direct Connect を使用すると、AWS とお客様のデータセンター、オフィス、またはコロケーション環境との間にプライベート接続を作成することができます。これにより帯域幅スループットが増加し、インターネットベースの接続と比較して、より一貫性の高いサービスを実現できます...

・AWS Direct Connect - AWS への専用ネットワーク接続 ※外部サイト(AWSサイト)へ


AWS Direct Connect



関連リンク

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・NRI / ソリューション・製品・サービス / パッケージクラウドインテグレーション - 特集:S/4 HANAへの道、戦略的移行を成功に導く 3つの要諦 - ※NRIサイトへ

・NRI / ソリューション・製品・サービス / S/4HANA Enterprise Management - 適用実績:NRIセキュアテクノロジーズ株式会社 - ※NRIサイトへ

・2020/03/04 DX(デジタルトランスフォーメーション)支援に向け、SAP S/4HANA® を活用してトラスコ中山の基幹システムを刷新 ※NRIサイトへ

・2016/05/16 SAP® S/4HANA Enterprise Management が 日本で初めて稼働を開始 - NRIセキュアテクノロジーズの業務効率化と、セキュリティ機能の強化を短期に実現 -(PDF) ※NRIサイトへ

・2015/08/04 SAP の次世代 ERP「SAP® S/4HANA」を NRIセキュアテクノロジーズへ導入 - NRIは、SAP 製品への先行的な取り組みを開始 -(PDF) ※NRIサイトへ


  • AWS SAP コンピテンシー

    野村総合研究所(NRI)は、AWS プレミアコンサルティングパートナーです。多数の顧客エンゲージメントや幅広い経験、顧客とのフィードバックやサクセスストーリーの収集を通じて、2013年に日本で初めて認定されて以降、8年連続で AWS プレミアコンサルティングパートナーに認定されています。

    また NRIは、SAP の実装・移行・革新における 技術的熟練度と実証済みの成功事例により取得した「AWS SAP コンピテンシー」のほかに、「AWS 金融サービスコンピテンシー」「AWS 移行コンピテンシー」「AWS セキュリティコンピテンシー」「AWS Oracle コンピテンシー」を取得しており、コンサルティング、システム開発・運用、アナリティクスといった幅広い分野で、お客様の課題解決に AWS を活用し、DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現に取り組んでいます。



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