AWS 導入事例:
住信SBIネット銀行株式会社 様

マルチリージョン構成による 災対環境の構築で、
インターネットバンキングの可用性を 大幅に向上

~ 東京リージョンから 大阪リージョンへの DR 自動切替を実装し、RPO ゼロ秒を実現 ~

- 2024/02/01

住信SBIネット銀行株式会社 様(以下「住信SBIネット銀行」、敬称略)は、迅速かつ柔軟なサービス提供を実現するために、2017年から クラウドへの全面的な移行を開始し、クラウドネイティブ化を推進しています。今回は、AWS の機能を活用することで、データの完全性を確保したまま マルチリージョン化を実施。システムを障害で停止させることなく 稼働し続けられる能力を 高めました。

この取り組みについて、住信SBIネット銀行の 開業当初から、インターネットバンキングシステムの Webフロントシステム、スマホアプリ、ローン証貸システム、ATMGW の システム開発を支援し、オンプレミスから AWS への 移行プロジェクトにも 伴走してきた 株式会社野村総合研究所(以下「NRI」)の担当者を交えて、お話を伺いました。

写真左から、住信SBIネット銀行の 渡邊 弘 氏、NRIの 井上 一真・矢野 純平 - AWS 導入事例: 住信SBIネット銀行株式会社 様

- 写真左から、住信SBIネット銀行の 渡邊 弘 氏、NRIの 井上 一真・矢野 純平。



導入の背景・経緯

サービスを止めないことが 最大のミッション

ネット銀行大手の 住信SBIネット銀行は、インターネットを通じて 銀行サービスを提供する デジタルバンクと、決済等の各種銀行機能を API として提供する BaaS (Banking as a Service)を中心に 事業を展開しています。2020年には BaaS を軸に 銀行機能を パートナー企業に提供する「NEOBANK」サービスも開始し、利用企業は すでに 20社近くに上ります。

インターネットバンキングだけで 口座数が 600万を超え、各種アプリ経由で利用する ユーザー数が 300万を超える同行にとって、システム障害は たとえ数分であったとしても 影響は広範囲に及びます。そのため システムの信頼性に関しては 常に最優先課題として取り組み、柔軟性や拡張性、可用性の高さという AWS の特長を 最大限に活かした システムを構築し、冗長化も進めてきました。しかし、クラウドといえども ハードウェア障害の発生リスクは避けられず、地震等の甚大な災害が発生すると、データセンター そのものが被災する可能性もあります。そのような状況に陥ったときでも サービスを止めない方法を模索してきた同行にとって、マルチリージョン化は 必然の流れでした。

「システム障害による サービスの停止は お客様に多大な迷惑をかけ、会社の信頼にもかかわるため、可用性の確保については 最大限の力を注いでいます。2021年3月に AWS 大阪リージョンが 正式ローンチされたのを受け、これを活用した 災対環境を構築することにしました」と話すのは、住信SBIネット銀行 システム開発部 部長 渡邊 弘 氏 です。「東京リージョンで システム障害が発生した場合、自動的に 大阪リージョンに切り替えて サービスを継続させようというものです。その際、ある程度の時間、サービスが止まることは 許容できても、データが不整合になることは 金融機関として 許されません。そのため、東京リージョンから 大阪リージョンへの 切替発生時の RPO(目標復旧時点 : Recovery Point Objective)は ゼロ秒、RTO(目標復旧時間 : Recovery Time Objective)は 3分という目標を設定しました」

住信SBIネット銀行の 渡邊 弘 氏 - AWS 導入事例: 住信SBIネット銀行株式会社 様

- 住信SBIネット銀行の 渡邊 弘 氏。



導入の概要・ポイント

RPO ゼロ秒、RTO 5分を 実現

災対環境の構築に当たっては、東京リージョン・大阪リージョンの 双方に同性能、同数台の サーバを設置。データベースには、複数の AWS リージョンに配置できる Amazon Aurora Global Database を採用しました。Datadog による 複数箇所(3ロケーション × 3経路)での 外形監視を行い、東京リージョンの システムが正常に機能していないことを検知すると、Amazon EventBridge や AWS Lambda を用いた アクションの自動化により、データベースも含めて 大阪リージョンに 瞬時に切り替わります。誤発動防止のために、外形監視している 全ての箇所が NG となったときに 発動する仕組みとしました。

リージョン切替時には 東京リージョンの サービスを閉塞し、データベースへの書き込みを停止した上で、データ同期時間を考慮して 大阪リージョンの データベースを プライマリに昇格させます。これにより、リージョン切替時の RPO ゼロ秒を実現しました。ただし、障害発生時に 閉塞処理が 正常に動作しない恐れがあり、その場合、東京と大阪の データベースの更新状態に 乖離が発生する可能性があります。そのため、データベースへの アクセス制御や DNS キャッシュクリアなどの必要性を見込んで、RTO は 5分に変更しました。

本プロジェクトの NRI側担当として 中心的役割を担った 矢野 純平 は、「基本的に AWS の サービスを利用して 構築していますが、オリジナルのままでは 要求仕様を満たせない場合もありました。例えば、データベースが切り替わってから 大阪リージョンの データベースの エンドポイントが利用可能となるまで 若干のラグがあったのですが、そのラグによる影響を回避する工夫を施すなどの 改善を重ねて、RPO ゼロ秒、RTO 5分を 実現しました」と話します。

「NRIには AWS の有識者が多く、以前にも 最新のトレンドを うまく採用した基盤をつくっていただきました。マルチリージョン構成での DR 自動切替の実装は 国内では前例がありませんでしたが、きめ細やかなサポートを提供していただき 非常に心強かったです」(渡邊 氏)

NRIの 矢野 純平 - AWS 導入事例: 住信SBIネット銀行株式会社 様

- NRIの 矢野 純平。



導入の効果、今後の展望

Active/Active 化によって さらなる信頼性向上を目指す

マルチリージョン構成による 災対環境の構築は 2023年8月に完了し、運用も始まっています。これまでのところ 不測の事態が発生して DR 自動切替が発動したことはありませんが、安心感は格段に高まりました。今後は、「Active (東京) / Standby (大阪)」で 稼働している システムの「Active (東京) / Active (大阪)」化も 目指します。これによって、負荷分散と コスト低減を図るだけでなく、万が一 の 大阪リージョン起動エラーという リスクをなくすことが できます。

現在は AWS 活用の 次段階として 既存システムの マイクロサービス化を進めており、2026年に完成予定です。マイクロサービス化によって アジリティの高い システム開発環境を構築し、金融サービスの さらなる付加価値向上に つなげます。

渡邊 氏は、「基幹システムの AWS 移行も マルチリージョン化も、金融機関としては おそらく当行が 国内で最初の事例ではないかと 思います。DR 自動切替にしても、当初は 可能かどうか 分かりませんでしたが、NRIの協力を得て 実現することができました。AWS が 日本で ローンチして 間もない技術を用いる際には、それを使えるエンジニアを抱える NRI がなければ 立ちゆきません。これからも 一緒に新しいことに チャレンジしていきたいと考えています」と、今後の イノベーションにも 期待を寄せてくださいました。

写真左から、NRIの 井上 一真、住信SBIネット銀行の 渡邊 弘 氏、NRIの 矢野 純平 - AWS 導入事例: 住信SBIネット銀行株式会社 様

- 写真左から、NRIの 井上 一真、住信SBIネット銀行の 渡邊 弘 氏、NRIの 矢野 純平。



企業紹介







  • 住信SBIネット銀行株式会社 - SBI Sumishin Net Bank, Ltd.

    住信SBIネット銀行株式会社
    - SBI Sumishin Net Bank, Ltd.

    先進的な IT 技術を活用し、
    どこよりも使いやすい デジタルバンクサービスへ 

    住信SBIネット銀行は 2007年 開業の ネット専業銀行。現在では 預金口座数 600万口座、預金総残高 9兆円、住宅ローン取扱額 10兆円を突破するなど、多くのお客様に ご利用いただいています。

    これからも 先進的な IT 技術を活用し、どこよりも使いやすい デジタルバンクサービスを目指して、お客様に 新しい銀行体験を お届けします。

    ・住信SBIネット銀行 ホームページ ※外部サイトへ

    ・住信SBIネット銀行 / NEOBANK (ネオバンク) ※外部サイトへ

※ 預金口座数は 2023年2月6日時点、預金総残高は 2023年12月11日時点、住宅ローン取扱額は 2023年10月30日時点のもの。



関連する AWS の 製品、リージョン、ベストプラクティス

Amazon Aurora Global Database

Amazon Aurora Global Database は グローバル分散アプリケーション向けに 設計されており、単一の Amazon Aurora データベースを 複数の AWS リージョンに またがって 運用できます。データベースの パフォーマンスに影響を与えずに データを レプリケートし、各リージョンで レイテンシーを低減して ローカル読み取りを高速化し、リージョン規模の停止からの ディザスタリカバリ(DR:災害復旧)を 実現します。

・AWS / Amazon Aurora Global Database ※外部サイトへ

Amazon EventBridge

Amazon EventBridge は、イベントを使用して アプリケーション コンポーネント同士を接続する サーバーレスサービスです。これにより、スケーラブルな イベント駆動型アプリケーションを簡単に構築できます。イベント駆動型アーキテクチャとは、イベントの発信と応答によって連携する、ゆるやかに結合された ソフトウェアシステムを構築するスタイルです。イベント駆動型アーキテクチャは、俊敏性を高め、信頼性が高く スケーラブルな アプリケーションを構築するのに 役立ちます。

Amazon EventBridge を使用して、自社開発アプリケーション、AWS サービス、サードパーティ ソフトウェアなどの ソースから、組織全体の コンシューマアプリケーションに イベントを ルーティングできます。Amazon EventBridge では、イベントの取り込み、フィルタリング、変換、配信を、シンプル かつ 一貫性のある方法で行うことができるため、アプリケーションを すばやく構築できます。

・AWS / Amazon EventBridge - サーバーレスイベントバスで アプリ同士を簡単に接続 - ※外部サイトへ

・AWS ドキュメント / Amazon EventBridge とは? ※外部サイトへ

AWS Lambda

AWS Lambda は イベント発生時に お客様のコードを実行し、基盤となる コンピューティングリソースを お客様に代わって管理する、サーバーレスコンピューティングサービスです。これらのイベントには、状態の変化や、ユーザーが eコマースウェブサイトの ショッピングカートに商品を入れるなどの 更新が含まれます。AWS Lambda を使用すると、カスタムロジックを使って AWS の他のサービスをスケールすることや、AWS の規模、パフォーマンス、セキュリティを活用して 運用する自社の バックエンドサービスを作成することができます。AWS Lambda では、複数のイベント (Amazon API Gateway 経由の HTTP リクエスト、Amazon Simple Storage Service (Amazon S3)バケット内の オブジェクト変更、Amazon DynamoDB 内の テーブル更新、AWS Step Functions 内の状態遷移など) に応答して、自動的に コードが実行されます。

AWS Lambda では、お客様のコードが 高可用性コンピューティング インフラストラクチャで運用され、お客様のコンピューティングリソースの管理の すべてが行われます。これには、サーバーと オペレーティングシステムの メンテナンス、容量の プロビジョニングと オートスケーリング、コードと セキュリティパッチの デプロイ、コードの モニタリングと ロギングが含まれます。

・AWS / AWS Lambda - サーバーや クラスターについて検討することなく コードを実行 - ※外部サイトへ

・AWS ドキュメント / AWS Lambda の概要 ※外部サイトへ

AWS 大阪リージョン

AWS アジアパシフィック(大阪)リージョンは 日本で 2番目、アジア太平洋地域で 9番目、世界で 25番目に 新たに開設された 3つの アベイラビリティーゾーン(AZ)を持つ AWS リージョンです。

AWS 大阪リージョンは、単独の AWS リージョンとしてご利用いただける他、直線距離で 約 400km 離れた場所に位置する AWS アジアパシフィック(東京リージョン)と 組みわせて利用することで、単一の AWS リージョン内にある マルチ AZ 構成で充足が難しい災害や 障害発生時の業務継続性要件が求められる ワークロードや アプリケーションを 日本国内にある 2つのリージョンの連携により 実現することが可能です。

・AWS 大阪リージョン - 2021年3月 誕生! ※外部サイトへ

ディザスタリカバリ(DR)とは?

ディザスタリカバリ(災害復旧: Disaster Recovery, DR)は、組織が テクノロジー関連の災害を予測して 対処するプロセス。停電、自然事象、セキュリティに関する問題など、ワークロード または システムが 主要なデプロイ場所で ビジネス目標を達成できなくなるような事象に備え、復旧するプロセスです。ディザスタリカバリ目標は、目標復旧時点(RPO)と 目標復旧時間(RTO)で 測定されます。ディザスタリカバリによって 処理される障害は、高可用性によって カバーされる障害よりも まれで、大規模な ディザスタイベントである傾向があります。ディザスタリカバリには、そのような イベントから 迅速に復旧するための組織の手順と ポリシーが含まれます。

・AWS / ディザスタリカバリ とは? - IT ディザスタリカバリの説明 ※外部サイトへ

可用性(Availability)とは?

可用(使用可能)とは、必要なときに 取り決めた機能を 実行できることを 意味します。可用性(サービス可用性とも呼ばれる)は、回復力を数量的に測定するためによく使用される メトリクスであると同時に、的を絞った 回復力目標でもあります。可用性は、ワークロードが使用可能な時間の割合で示されます。

・AWS Well-Architected フレームワーク / 信頼性の柱 / 可用性 ※外部サイトへ



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  • AWS プレミアティアサービスパートナー

    野村総合研究所(NRI)は、AWS プレミアティアサービスパートナーです。多数の顧客エンゲージメントや 幅広い経験、顧客との フィードバックや サクセスストーリーの収集を通じて、2013年に日本で初めて認定されて以降、11年連続で AWS プレミアティアサービスパートナーに認定されています。

    また NRI は「AWS 金融サービスコンピテンシー」 「AWS 移行コンピテンシー」 「AWS DevOps コンピテンシー」 「AWS セキュリティコンピテンシー」 「AWS SAP コンピテンシー」 「AWS Oracle コンピテンシー」を取得しており、コンサルティング、システム開発・運用、アナリティクスといった 幅広い分野で、お客様の課題解決に AWS を活用し、DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現に取り組んでいます。




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