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  • 実例:クラウド人材の育成は難しい? 自発的にクラウドを学ぶ NRIの取り組み

    - 2021/08/16

    木美 雄太 - 2021 APN AWS Top Engineer



みなさん こんにちは。APN AWS Top Engineer の 木美 雄太 です。

今回は、クラウドの「変化の速さや 幅の広さ」に追従するための NRIの取り組みとして、メンバーが自発的にスキルアップを図っていく社内勉強会の取り組みをご紹介します。特に、定期的な勉強会への参加を「後押しする・きっかけを作る」ための工夫やチャレンジについて共有します。

クラウド化推進組織(CCoE)で 人材育成を担当されている方や、チームのパブリッククラウドのスキルアップにお悩みの方のご参考になれば幸いです。



クラウド人材の育成は難しい

クラウド活用において、よくお客さまからお伺いするお悩みの一つに「自社のクラウド人材の育成」があります。一般的に、クラウド化推進組織(CCoE: Cloud Center of Excellence)の役割の一つにも「人材育成」が入り、組織のクラウド活用のキーになる要素と言えます。

パブリッククラウドに関する研修や学習のための資料は、一般に多数公開されています。無償で公開されているものも多いです。しかし、トップダウンで研修を受講してもらったり、学習資料を共有しても、なかなか定着しないとお悩みになるケースが多いのも事実です。その理由の一つに「クラウドの幅の広さと変化の速さ」があると思います。

例えば、AWS(Amazon Web Services)では、200 以上のサービスが提供されており、年間 3,000 件以上のサービスアップデートが公開されます。この「幅の広さや 変化の速さ」は、従来とは全く異なり、同じ AWS で比べても 5年前とは全くスピード感が変わっています。これは一部の先端分野だけが進化しているわけではなく、EC2 や EBS、VPC といった基本のサービスも大きく進化し続けています。

AWS における サービスアップデート件数 - AWS 公式サイトの「AWS の最新情報 - What's New with AWS?」を、年ごとにフィルタしてカウント

- AWS 公式サイトの「 AWS の最新情報 - What's New with AWS? 」を、年ごとにフィルタしてカウント


かつてない「変化の速さや 幅の広さ」の中では、研修や学習資料は「小さな点」に過ぎず、実際に業務でクラウドを活用するに至ることは、難しいと思います(体系的に学ぶ目的や、最初の取っ掛かりとしては、研修や学習資料は⾮常に有用です)。また、OJT(On the Job Training)だけでは、ごく狭い領域にしか触れられず、新たな技術領域に挑戦することは、なかなか難しいと思います。

本記事では、クラウドの「変化の速さや 幅の広さ」に、線や面で追従するための NRIの取り組みとして、メンバーが自発的にスキルアップを図っていく社内勉強会の取り組みをご紹介します。

※ EC2:Amazon Elastic Compute Cloud(Amazon EC2)の略称で、AWS が提供する 安全でサイズ変更可能なコンピューティング性能をクラウド内で提供するウェブサービスのこと。
※ EBS:Amazon Elastic Block Store(Amazon EBS)の略称で、Amazon EC2 と共に使用するために設計された、スループットとトランザクションの両方が集中するどんな規模のワークロードにも対応できる、使いやすい高性能なブロックストレージサービスのこと。
※ VPC:Amazon Virtual Private Cloud(Amazon VPC)の略称で、定義した論理的に分離された仮想ネットワークで AWS リソースを起動できるようにするサービスのこと。



変化の速さや幅の広さを「楽しむこと」で、スキルアップが加速する

NRIでは、6年以上前から毎週 AWS 勉強会を社内で開催しています(AWS ユーザコミュニティでの登壇資料 「年間 40回 社内 AWS 勉強会を運営してみた」 で紹介)。組織に認められた活動ではありますが、企画・運営・登壇・参加については、参加者が自発的に行っています。また、「変化の速さや 幅の広さ」を「楽しみ」として、多様な実験と失敗、試行錯誤を共有しています。「変化の速さや 幅の広さ」に対して、気軽に安価に実環境で実験をして、失敗しても簡単にやり直せるというクラウドの特性を活かした学習方法と言えます。

このような継続的な勉強会に参加する層というのは、すでに自発的・継続的にスキルアップを図る意識のある層かと思います。そのため、今回はこのような勉強会への参加を「後押しする・きっかけを作る」ために、年に数回開催している大規模な社内 AWS 勉強会(NRIグループから数百名規模が参加)について、ご紹介します。


NRIグループ AWS Top Engineers Day

先日、大規模勉強会の⼀つとして、NRIグループの 「2021 APN Ambassadors」 「2021 APN AWS Top Engineers」 「AWS Community HERO」 (いずれも AWS の技術力を発揮した活動・成果を通じて、クラウドの知識や技術スキルを研鑽する個人を AWS 社が認定するプログラム)が集結し、「NRIグループ AWS Top Engineers Day」を開催しました。社外からも認定されている NRIのプロフェッショナルが、AWS の楽しみ方を発信することで、「『楽しむこと』がスキルアップの⼤きな原動力であるというメッセージを伝えられるのではないか?」というチャレンジでした。

その中でも好評だったセッションの一つをご紹介します。Ambassador・Top Engineer の 5人が、「大量アクセスに耐える COVID-19 ワクチン予約サイト」というお題に対して、即興の 15分でアーキテクチャ設計をする様子を、ライブ配信しました。

AWS における設計・運用のベストプラクティス集である AWS Well-Architected フレームワークを深く理解した
5人が、検討のプロセスや各自の経験を解説しながら、共同で設計を進めました。設計結果だけではなく、Top Engineer の思考や発想、工夫や探求する様子を生で伝える新たなチャレンジでした。データベースに Aurora(RDBサービス)を使う派と DynamoDB(NoSQL データベースサービス)を使う派で意見が分かれるなど、議論も白熱しましたが、最終的に、15分で 一通りのアーキテクチャを完成させました。

参加者からは「多様な AWS サービスを組み合わせてシステムを構築することの『楽しみ方』が見えて、AWS をちょっと触ってみたいなと思う内容でした」といった、クラウドアーキテクチャ設計の楽しさに気付いたという趣旨の反響をいただきました。

NRIグループ AWS Top Engineers Day - 即興の 15分で 5人が共同でアーキテクチャ設計を進める様⼦(Visual Studio Code の Live Share 機能で 1枚の draw.io の構成図を共同編集)

- 即興の 15分で 5人が共同でアーキテクチャ設計を進める様⼦(Visual Studio Code の Live Share 機能で 1枚の draw.io の構成図を共同編集)


このような日々クラウドを活用している人材が、「クラウドを学ぶこと・活用することの楽しさ」を社内に発信し、より密なコミュニティである毎週の社内勉強会に誘致して、「変化の速さや 幅の広さ」を「楽しむこと」を習慣化するという流れを作ることで、クラウド人材の育成にチャレンジしています。

私自身が、「社内勉強会を通してスキルアップを図ってきた人材」ですので、小さな一歩ではありますが、一つの成果は出ているのかなと思っています。

※ Aurora:Amazon Aurora の略称で、AWS が提供する クラウド向けに構築された、MySQL および PostgreSQL と互換性のあるリレーショナルデータベースのこと。
※ RDB:Relational Database(リレーショナルデータベース、関係データベース)の略称。
※ DynamoDB:Amazon DynamoDB の略称で、AWS が提供する、どんな規模にも対応する高速で柔軟な NoSQL データベースサービスのこと。



終わりに

本記事では、クラウド人材の育成における NRIの取り組みとして、社内勉強会についてご紹介しました。私が関わる以前より、数人の有志が小さい会から始めて、徐々に浸透し、ようやく実を結び始めた活動です。

また、今回は私が運営に関わっている AWS にフォーカスしてご紹介しましたが、NRIでは Microsoft Azure や Google Cloud、OCI(Oracle Cloud Infrastructure)などでも、同様の取り組みが実施されています。そのため、これからクラウドに関する社内勉強会を立ち上げようとされている方にとっては、将来像の一例として、参考・後押しになれば幸いです。すでに社内勉強会を運営されている方にとっては、その輪をさらに広げていく 一つの方法として参考になれば幸甚です。

ブログ記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました。



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    また NRIは、2019年に「AWS マネージドサービスプロバイダー」認定(VCL 4.0)、2020年に「AWS Well-Architected パートナープログラム」認定を取得しており、コンサルティング、システム開発・運用、アナリティクスといった幅広い分野で、お客様の課題解決に AWS を活用し、DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現に取り組んでいます。


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