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  • Google Cloud で DX 推進

    ~ Looker の活用で、データドリブンな企業として ビジネスを変革 ~

    - 2022/04/14

    西村 忠己 - Nomura Research Institute, Ltd. / 野村総合研究所(NRI)



こんにちは、野村総合研究所(NRI)の 西村 忠己です。

atlax ブログで 以前、「 Google Cloud の Anthos を使ったマルチクラウド、ハイブリッドクラウド 」について、記事を書かせていただきました。今回は、「DX 推進のために Google Cloud をどのように活用していくか?」ということを、お伝えしたいと思います。



DX のゴールは ビジネス変革

「そもそも、DX(デジタル トランスフォーメーション)とは、なんだろう?」

これが、DX 推進活動の会議で 1番最初に話題にでてくる疑問ではないでしょうか? こう聞かれたときに「なんとなくイメージするものはあるが、はっきりとは答えられない」という方もおられるかと思います。まずは、言葉の意味を確認してみましょう。

経済産業省の「DX 推進ガイドライン」には、次のように書かれています。

■ 参考: DX 推進指標における DX の定義
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」(DX 推進ガイドライン Ver. 1.0 より 抜粋)


この定義から DX とは「単なる業務のデジタル化を意味するのではなく、その先のビジネスモデルを変革することが目的だ」ということがお分かりいただけると思います。この DX の定義は徐々に理解が広まってきていると感じます。しかし、いきなり今までやってきた自社のビジネスモデルを変えていくというのは抵抗もあるし、そこが 1番難しいことだと思われる点ではないでしょうか。

ここで、「データとデジタル技術を活用して」という点に着目してみましょう。「デジタル化 ⇒ データを蓄積 ⇒ データ分析 ⇒ ビジネス変革(デジタル化を含む)⇒ 新たなデータを蓄積 ⇒ 新たなデータ分析 ⇒ 新たなビジネス変革 ... 」という流れでの DX 推進が理想だと、私は考えます。デジタル化してすぐに ビジネス変革をしようというのでなく、デジタル化の次に「データを蓄積して、データを分析・活用する」という データドリブンな企業体系への変化を試みること。その結果として「データ活用を足掛かりにした ビジネス変革を行っていく」、つまりは DX が行われているという状態を目指すと考えれば、ステップとしては シンプルだと思います。

ただ、そうは言ってもまず デジタル化という 第1 のハードルがあり、その次に、得られたデータとデジタル技術をどのように ビジネス変革につなげるのかという 第2 のハードルがあります。多くの企業では 第1 のハードルをなんとかクリアしたものの、第2 のハードルの前で、試行錯誤している段階ではないでしょうか?

私は、この 第1 と 第2 のハードルの両方をクリアするために、パブリッククラウドを活用することが重要であり、大きな効果をもたらしてくれると思います。

※ データドリブン(Data Driven):データの分析結果を、意思決定プロセスに組み込み、具体的なアクションにつなげる 業務プロセスのこと。



データ分析に強い Google Cloud

パブリッククラウドで提供しているサービスは IaaS、PaaS、SaaS など様々で、利用者のニーズに合わせて活用することができます。特に Google Cloud の App Engine や Cloud Run のような サーバーレスな プラットフォーム活用により、インフラを気にせず、アプリケーション開発に注力できます。結果として デジタル化の急速な推進という恩恵を受けられるでしょう。

また前述のとおり、DX の肝はなんといっても データを活用することにあります。そして、Google Cloud の最大の強みであり、Google Cloud が データドリブンな企業変化に大きな効果を与えてくれると思う理由の 1つに、BigQuery、サーバレス Spark、Dataflow、Looker というビッグデータの高速な処理・分析に特化したサービスの存在があります。Google という会社がグローバル規模で膨大な情報量を処理・分析して提供する検索エンジンから始まったということが背景にあり、いわば Google が今まで培ってきた技術やノウハウが詰め込まれたサービスと言って良いでしょう。こういったデータ関連の Google Cloud のサービスも また、インフラを気にする必要がないため、デジタル化によって得られた膨大なデータを Dataflow で処理し、BigQuery(データウェアハウス)に集約して、最終的に Looker(BI ツール)を使用して 蓄積されたデータを分析するという流れでの データ活用に注力できます。

以下は、データ処理の流れを表したものです。

Google Cloud を活用した データ処理の流れ

- Google Cloud を活用した データ処理の流れ

※ ETL:Extract(抽出)、Transform(変換)、Load(読み込み)の略称で、複数のシステムからのデータを 単一のデータベース、データストア、データ ウェアハウス、データレイクに統合するための手法のこと。
※ Dataflow:さまざまなデータ処理パターンの実行に対応した、Google Cloud が提供する マネージド サービス。
※ DWH(データ ウェアハウス):より多くの情報に基づく意思決定を行うため、大量のデータを格納して、分析、帳票作成、エンドユーザコンピューティングなどに 利用するための データベース や 管理システムのこと。
※ BigQuery:ビジネスのアジリティ(俊敏性)に対応して設計され、スケーラビリティと費用対効果に優れた、Google Cloud が提供する サーバーレスな マルチクラウド データ ウェアハウス。
※ App Engine:大規模な ウェブ アプリケーションの開発 および ホスティングのため、Google Cloud が提供する フルマネージド型のサーバーレス プラットフォーム。
※ Cloud Run:Google Cloud が提供する サーバレスな マネージド コンピューティング プラットフォームのこと。リクエストまたはイベント経由で呼び出し可能なコンテナを実行できる。
※ Spark は、Apache Software Foundation の商標です。



BI ツールとは

BI(ビジネス インテリジェンス)は、企業が蓄積した ビジネス データを分析し、その結果を分かりやすくグラフや図表で見える化(可視化)したものです。その目的は、ビジネスの意思決定、および 変革のサポートとして活用することであり、そういった機能をもったソフトウェアを「BI ツール」と呼びます。

昨今、BI ツールの種類も多くなってきました。しかしながら、企業で蓄積されるデータは膨大になりがちであるため、BI ツールには ビッグデータ処理における高い性能が求められたり、ツールを使用するために データ分析の専門家が必要になったりします。それに加え、BI ツールによる データ処理の方法が人によって異なっていれば、人によって集計結果が異なり、なにが正しいのか分からなくなるということもありえます。そうした問題を解消しつつ、迅速な BI を提供するツールとして「Looker」を次に紹介します。



Looker とは

Looker は、Google Cloud が提供する、シリコンバレー発の データ分析プラットフォームです。

それまで BI(ビジネス インテリジェンス)としての作業は、アナリストによって行われるのが一般的でした。 Looker は「アナリストやエンジニアに頼らずとも、企業に属するすべての人が、正しいデータを取得し、容易に活用できること」をコンセプトとして提供されている BI ツールです。




Looker の特徴

Looker には、[1] データのアップロードが不要、[2] 統一されたデータ定義、[3] 柔軟な既存ツールとの連携 という 3つの特徴があります。

Looker は 独自のデータベースを持たず、データ ウェアハウス(DWH)から直接、分析用のデータレコードを抽出します。そのため、Looker 用の データベース サーバの構築費用は不要です。データを同期するためのタイムラグもないので、最新のデータを分析に使用することができます。特に Looker を、BigQuery のようなビッグデータを安価かつ高速に処理することができる データ ウェアハウスと接続すると、その利点を最大限に活用することができます。

また、Looker は「LookML」というモデリング言語を利用して、データの計算・集計、および データ関係を定義します。その定義された指標を使用することで、ダッシュボードに表示するデータの分析結果に一貫性が保たれます。そして、LookML の定義を変更することで、その指標を使用しているダッシュボードに自動的に反映されるため、ダッシュボードをひとつひとつ変更していくという手間が不要です。

加えて、Looker で分析した結果のレポートを、社内の既存ツール(E-mail、Slack、Google Drive、Tableau)へ シームレスに連携が可能です。これにより社内のコラボレーションが円滑に促進されるため、データ活用の強化 および 業務効率化にもつながります。

以下は、それぞれの特徴を整理したものです。

Looker の特徴: データベース追加不要、データ定義の統一性、シームレスなツールコラボレーション

- Looker の特徴: データベース追加不要、データ定義の統一性、シームレスなツールコラボレーション

※ Slack は、Slack Technologies, Inc. の米国およびその他の国における商標または登録商標です。
※ Tableau は、Tableau Software, LLC の米国およびその他の国における商標または登録商標です。


Looker による 課題解決: データドリブンな企業として ビジネス変革へ 大きな一歩

これらの Looker の特徴により、データアナリストのような専門的な担当者のみしか データ集計できないというような データボトルネックや、各人がそれぞれの データ定義を使用することによる データ集計結果の矛盾(データカオス)といった課題を解消してくれます。これにより、正確なデータ集計結果を基にした 根拠ある意思決定が可能となり、データドリブンな企業としてビジネス変革へ大きな一歩を踏み出せると思います。



Looker と Google データポータルの比較

今回、DX 推進 および データドリブンな企業への変化のために、BI ツールの Looker 活用をご紹介しましたが、Google は Looker 以外にも「 データポータル(Data Portal) 」という BI ツールを提供しています。

データの可視化を行う背景や目的は、企業によって様々だと思います。例えば、既存のデータを手っ取り早く可視化して現状を見極めたいというような場合や、今までデータ可視化をやったことがなく、手軽に始めてみたいという場合は データポータルの使用をお薦めします。ブラウザさえあれば、無料で利用可能です。

ただし、データポータルで データ活用が進み、利用者や分析データ量、ダッシュボードが増加するにつれて、前述の データボトルネック や データカオス といった課題が発生し、管理作業によるアジリティ(俊敏性)低下や 古いデータによる誤ったビジネス判断を招くおそれがあります。将来的にデータの蓄積・分析、そして可視化を続けていくことが見込まれている場合、管理コストを抑えつつ、作業効率化やセキュリティ強化が可能な Looker が、最適な選択肢になると考えます。



最後に

DX(デジタル トランスフォーメーション)には、「これをやれば DX 達成」というような 1つの正解があるわけではありません。それゆえ 推進が難しく、多くの方が試行錯誤されている状態なのだと思います。AI、ブロックチェーンという技術の進歩によって、ビジネストレンドの移り変わりも激しく、実現可能なものが増えてきました。ただ、共通して言えるのは、どの技術も蓄積されたデータによって支えられているということでしょう。

最初にも記載したとおり、DX の肝はデータです。お客様のビジネスをデータドリブンなものにすることにより、DX 推進のお手伝いができればと考えております。

ブログ記事を最後まで読んでいただき ありがとうございました。



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NRIにおける Google Cloud の取り組み

NRIは、Google Cloud に精通した技術者から成る NRIグループ横断組織「NRI Google Cloud Business Unit(NGBU)」を、2020年11月に設置しました。NGBU には、グーグル・クラウド・ジャパン合同会社のチームも参画し、案件の共同開拓や共同提案などの営業協力を行っています。

また NRI の「atlax for Google Cloud」では、DX に関するコンサルティング、および Google Cloud 導入の検討支援から、システムの設計・構築・運用まで、一括でご提供しています。

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