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  • ハイブリッドクラウド、マルチクラウドという選択肢 - Anthos 活用 -

    - 2021/09/27

    西村 忠己 - Nomura Research Institute, Ltd. / 野村総合研究所(NRI)




Anthos とは

Anthos とは、ハイブリッドクラウド環境とマルチクラウド環境における 開発と運用のためのプラットフォームです。クラウドファーストが提唱される時代に、"Write once, run anywhere" (WORA、1度書いただけで どこでも動かせる)を実現するプラットフォームとして、2019年から Google Cloud が提供しているサービスになります。

今回は、この Anthos を主体とした、ハイブリッドクラウド、マルチクラウドの活用について、ご紹介したいと思います。



ハイブリッドクラウド、マルチクラウド とは

まず、「ハイブリッドクラウド」を簡単に説明しますと、「ハイブリッドクラウド」は、1つ もしくは 複数のパブリッククラウドと、オンプレミス環境やプライベートクラウドを併せて利用するモデルです。一方、「マルチクラウド」は、複数のパブリッククラウドを利用するモデルです。

「クラウドの活用」といっても、その実装モデルは「パブリッククラウド」「プライベートクラウド」「ハイブリッドクラウド」「マルチクラウド」と、大きく 4つに分類されます。クラウド基盤環境を複数の利用者で共用する「パブリッククラウド」と、自社組織専用クラウド基盤を社内の利用者で共用する「プライベートクラウド」は、広く知られているかと思います。

しかしながら、「ハイブリッドクラウド」と「マルチクラウド」は 似た言葉であり、複数環境の利用という点で共通しているため、よく混同されがちです。2つには「パブリッククラウドと、オンプレミス環境やプライベートクラウドとを組み合わせて構成されているか」、それとも「パブリッククラウドだけで構成されているか」という明確な違いがあります。以下は、それぞれの特徴を表したものです。

「ハイブリッドクラウド」と「マルチクラウド」の 特徴・概略図

-「ハイブリッドクラウド」と「マルチクラウド」の 特徴・概略図

仮に複数のパブリッククラウド(マルチクラウド要素)と オンプレミス環境、プライベートクラウド(ハイブリッド要素)を組み合わせたモデルの場合、「ハイブリッドクラウド」でもあり、「マルチクラウド」でもあると言えます。



ハイブリッドクラウド、マルチクラウドが 注目される理由

そもそもなぜ、ハイブリッドクラウドやマルチクラウドといったモデルが必要なのでしょうか? 多くの既存のシステムは、オンプレミス環境やプライベートクラウドでの自社サーバで稼働しています。そのため、いざパブリッククラウドへの移行をしようとしても、既存の基盤、レガシーアプリケーション、データベースというような構成に縛られ、結果として移行が進まないというケースが多くあります。そういった場合に、移行可能な一部分だけをパブリッククラウドへ移行したり、ログ解析やデータ分析のみをパブリッククラウドで実施したりというような、「ハイブリッドクラウドモデル」を採用します。

また、新規システムをパブリッククラウドに構築する場合において、パブリッククラウドのサービスは特徴が異なるため、各パブリッククラウドからサービスを組み合わせて使用したいという場合などには「マルチクラウドモデル」を採用します。そして何より、マルチクラウドは単一のクラウドベンダーに依存しないことから、仮に「ある 1つのパブリッククラウドで大規模な障害が発生した」場合でも、他のパブリッククラウドへの冗長構成にしておくことで、可用性を向上させることができるというのは、大きなメリットと言えるでしょう。

このように、両者はパブリッククラウドへの移行における課題をうまく回避し、利点を活用できるため、注目されています。



Anthos 活用の ハイブリッドクラウド、マルチクラウド

ここまでハイブリッドクラウド、マルチクラウドのモデルとメリットを説明しましたが、それは簡単に運用できるということではありません。環境基盤ごとに独自の管理手法が採用されているため、従来は単一の環境基盤で構成されているシステムに対して、環境基盤の数だけ管理手法を適用する必要があります。その分、基盤環境の管理、セキュリティ監視、コンプライアンス維持におけるオーバーヘッド(1つの処理に伴う付加的な処理)が多くなってしまうのは 当然です。

これらの問題を解決するための Google Cloud のサービスが、冒頭で紹介した「Anthos」です。Anthos を導入することで、Google Cloud はもちろんのこと、AWS(Amazon Web Services)、Microsoft Azure、OCI(Oracle Cloud Infrastructure)といった主要パブリッククラウド、および オンプレミスなどを、Kubernetes をベースとした管理インターフェース 1つで操作管理することができます。(Anthos は 複数 Kubernetes コンテナの複雑な管理を容易にするために、ハイブリッドクラウド、マルチクラウドだけではなく、単一のパブリッククラウドで 使用される場合もあります)

さらに、Anthos Config Management 機能を利用することで、セキュリティ および コンプライアンス要件に応じたポリシーを定義し、すべての環境基盤へ適用することが可能です。Google Cloud のこれらのサービスを用いることで、ハイブリッドクラウド、マルチクラウドの管理オーバーヘッドを限りなく少なくした上で、各モデルのメリットを享受することができます。

Anthos や Anthos Config Management 機能のイメージ図

- Anthos や Anthos Config Management 機能のイメージ図

※ Kubernetes(クバネティス、クーベネティス、K8s):デプロイやスケーリングを自動化したり、コンテナ化されたアプリケーションを管理したりするための、オープンソースのシステムのこと。現在利用されているコンテナオーケストレーションツールの中でも、多くのシェアを持つ代表的なツールとなっている。Kubernetes を用いることで、コンテナを安全、高可用に運用することができる。


ハイブリッド および マルチクラウドの パターン と プラクティスについて

Google Cloud では 公式ドキュメントとして、ハイブリッド および マルチクラウドの アーキテクチャパターンが公開されています。

・Google Cloud / Cloud アーキテクチャ センター / ハイブリッドおよびマルチクラウドのパターンとプラクティス ※外部サイトへ



ハイブリッドクラウド、マルチクラウド向け データ分析

Google Cloud は、なんと言っても「データ分析」に強みがあります。しかし、いざデータ分析を実施しようとしたとしても、Anthos によるハイブリッドクラウド、マルチクラウドモデルにおいては、アプリケーションにて蓄積したデータが、各パブリッククラウド・各サービスに分散していて、必要なデータセットに集約されていないということが多々あります。そういった場合に、分散しているデータでも 効率よくデータ分析が行えるようにするため、Google Cloud は 次のようなツールを提供しています。


※ データウェアハウス(DWH):より多くの情報に基づく意思決定を行うため、大量のデータを格納して、分析、帳票作成、エンドユーザコンピューティングなどに 利用するための データベース や 管理システムのこと。


ビジネスニーズ と コスト

今回、ハイブリッドクラウドやマルチクラウドのモデルをご紹介しましたが、必ずしも最適な選択肢になるとは限りません。システムの構成としては、単一のパブリッククラウドで 必要十分にビジネスニーズを満たせる場合も数多くあります。また、マルチクラウドとして クラウドサービスを使えば使うほど、コストも比例して増加してしまいます。3年後、5年後、10年後といった 将来的なシステムの開発・運用と ビジネス戦略を見据えた上で、今現在かけるべきコストと 必要なクラウドサービスを、多面的に検討することが重要であると考えます。

私が関わったシステムにおいて、ビジネスとしてアジリティ(俊敏性)が求められるものについては、パブリッククラウドを採用していることが多いと感じます。やはり、採用前の検討項目では、「システムを全部クラウドへ移行する場合」と「必要な部分のみの移行するハイブリッドクラウド構成」について、それぞれのメリット・デメリットの比較を必ず検討しました。そして、ほとんどの場合、移行コストがネックという話になりました。

パブリッククラウドへの移行は短期視点で見ると、コストが大きく見えてしまいますので、パブリッククラウドの採用に二の足を踏んでしまいがちです。ただ、長期的な視点で開発費用、運用と管理コストを考慮すると、将来のコスト削減につながりつつ、その他のメリットが多くあることが分かると思います。それに加えて、「Anthos の活用による さらなる運用コスト最小化」という観点が、今後の大きな検討ポイントの 1つになると、私は考えます。



最後に

クラウド技術は日々進化しています。今回ご紹介したサービスも、数カ月後にはさらなる互換性の対応が発表されるかもしれませんし、全く別の新しいサービスとして生まれ変わっている場合もあるでしょう。日々、技術のアップデート、情報をキャッチアップして、お客様へのより良い IT ソリューションをご提供できるように、精進してまいります。

ブログ記事を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。



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