AWS 導入事例:
株式会社三井E&Sマシナリー 様

非破壊検査サービスの AI・クラウド化に AWS を採用
- 2021/09/02

非破壊検査を業務の一つとする 株式会社三井E&Sマシナリー 様(以下「三井E&Sマシナリー」、敬称略)は、複合探査車やトンネル検査車で集めたデータを解析し、路面のひび割れや路面下の空洞、トンネル覆工コンクリート表面のクラックを見つけ出すことで、老朽化が進むインフラの維持を支えています。

今回はクラウドと AI を活用したトンネルや道路のインフラ診断を効率化する取り組みについて、共同開発を実施した 株式会社野村総合研究所(以下「NRI」)側のプロジェクトマネージャーを交えて、お話を伺いました。

三井E&Sマシナリー 事業開発センター 坂本 義行 氏、森島 弘吉 氏、赤祖父 亮佑 氏、NRI社員の矢野 誠一郎

- 写真左から、三井E&Sマシナリー 事業開発センター 坂本 義行 氏、森島 弘吉 氏、赤祖父 亮佑 氏、NRIの 矢野 誠一郎


導入の背景・経緯

検査業務のボトルネック解消を目指し、AI 導入を決意

「複合探査車」はレーザーとレーダを利用して路面のひび割れや路面下の空洞に関する情報を収集し、「トンネル検査車」はラインセンサカメラを利用してトンネル覆工コンクリート表面のクラックを探します。このトンネル検査車の開発により、従来は調査区間を通行止めにして目視で行っていた作業を、車で走りながら行えるようになり、交通に影響を与えることなく以前より短い時間で、大量の点検データを収集できるようになりました。しかし、点検データの画像を確認してひびや空洞の場所を割り出す作業は、専門の技術者によって目視で行われるため、多くの点検データを収集しても解析に時間を要してしまうという事態が生じていました。この問題を解決するために NRIと共同で開発したのが、AI で点検データを自動解析するシステムです。

「最初に路面下空洞の AI 解析を試行してもらったのですが、その結果が非常に良好だったことが NRIとの共同開発を決めた理由の一つです。また、膨大な量のデータのハンドリングも課題だったのですが、それについても良い解決策をいただけました」と、今回のプロジェクトで開発の中心的な役割を担った 三井E&Sマシナリー 事業開発センターの 赤祖父 亮佑 氏は語ります。

「例えばトンネル検査車の場合、PC につながれたラインセンサカメラが 13台設置されており、それぞれが 0.5ミリピッチでトンネルを撮影します。1キロメートルのトンネルを撮影すると 1台のカメラが 200万枚の写真を撮る計算になり、それが 13台分なので 2,600万枚になります。さらに、片側 1車線(上下 2車線)のトンネルの場合で平均 3往復しますから、蓄積されるデータ量は数テラバイトにのぼります。作業終了後にこれらのデータを HDD(ハードディスクドライブ)に転送し、解析するためのコンピュータに移すには膨大な時間がかかることに加え HDD の管理も大変になるのですが、AWS(Amazon Web Services)を利用することでこれらの問題を解決することができました」

三井E&Sマシナリー 事業開発センター  赤祖父 亮佑 氏

- 三井E&Sマシナリー 事業開発センター 赤祖父 亮佑 氏


導入の概要・ポイント

AWS Snowball の活用で、データハンドリングのストレスを軽減

AWS を選んだ理由の一つが、膨大なデータをクラウドに簡単に移動できる AWS Snowball の存在です。専用のデータストレージを物理的にやり取りすることで、作業現場の通信環境に左右されることなく全てのデータを AWS にアップロードすることができるため、撮影が終わってからデータ解析を始めるまでのリードタイムを最小限に収めることができるようになります。

「Snowball は、日本中どこにでも届けてもらえます。例えば大阪で点検を行った翌日に岡山の点検予定が入っている場合、大阪で点検が終わった場所へ Snowball に格納したデータを取りに来てもらい、岡山には別の Snowball を届けてもらえば、点検車を毎回東京のオフィスに戻して有線ネットワーク環境下でデータを数日かけて AWS にアップロードをする作業が必要なく、効率的にデータの収集・蓄積を行うことができるのです」と、現場での作業経験も豊富な 坂本 義行 氏(三井E&Sマシナリー)は、教えてくださいました。

「また、13台の PC を、それぞれ HDD につないでデータ転送するのは大変ですし、時間も相当かかりますが、Snowball に 1テラバイトのデータを送るのは 数時間程度です。これは、13台から一度に Snowball に吸い上げるための効率的なツールを NRIにつくっていただけたことも大きいのですが、そもそも Snowball という仕組みがないと成り立たなかったと思います。データ容量に対する Snowball のコストパフォーマンスにも満足しています」

このように、HDD の管理やデータ転送のストレスから解放され、データ収集・蓄積の業務効率は格段に上がっているようです。

三井E&Sマシナリー 事業開発センター  坂本 義行 氏

- 三井E&Sマシナリー 事業開発センター 坂本 義行 氏


開発の成果、今後の展望

解析時間短縮による効率化や、解析結果の偏りの平準化

集めたデータは、新たに開発した AI によって解析されます。その精度を高める苦労について、NRIの 矢野 誠一郎は、次のように話します。

「AI に学習させるための教師データには、教師データの数量と教師データとしての正確さが求められます。正しい教師データがたくさんあればあるほど AI は賢くなりますが、間違った教師データが混じるとその分 AI は正しく学習できなくなります。経験豊かな技術者であっても人間が教師データを作成する場合は、人ごとに必ずある程度のバラツキが生じます。教師データを作成する担当者ごとに教師データのバラつきを出さないためには、どのようなデータを教師データとして設定して学習させるかという部分に、AI 技術チームでは知恵を絞りました。様々な試行錯誤を繰り返し、トンネル検査車が撮影した画像から表面クラックを発見できる AI の仕組みを構築しました」

また、「複合探査車が収集したデータに基づく路面下の空洞判定・抽出」では従来の 7割、「路面上のひび割れ抽出」では 9割の時間短縮を実現し、迅速な解析結果の提供につなげています。

野村総合研究所(NRI) 矢野 誠一郎

- 野村総合研究所(NRI) 矢野 誠一郎


今回のプロジェクトについて、三井E&Sマシナリー 事業開発センター レーダグループ長の 森島 弘吉 氏は、以下のように総括してくださいました。

「これまで専門技術者が行っていた解析作業を自動化するためのステップの最初としては、非常に良いところまで来たと感じています。人間による判断が必要なシーンがかなり減ったことで、解析業務のスピードアップはもとより、携わる人々のストレスが大幅に軽減されました。今後は、究極の目標である完全自動化に向けて、さらに技術をみがいていきたいと考えています」

三井E&Sマシナリー 事業開発センター  森島 弘吉 氏

- 三井E&Sマシナリー 事業開発センター 森島 弘吉 氏


企業紹介


  • 株式会社三井E&Sマシナリー(Mitsui E&S Machinery Co., Ltd.)

    株式会社三井E&Sマシナリー
    - Mitsui E&S Machinery Co., Ltd.

    2018年4月、持株会社体制への移行とともに、「三井造船株式会社」は「株式会社三井E&Sホールディングス」に商号変更し、機械・システム事業本部は「株式会社三井E&Sマシナリー」として生まれ変わりました。

    船舶用ディーゼルエンジン、港湾クレーンに代表される海上物流輸送領域に欠かせない様々なマシナリーの開発、設計、製造、保守を担い、各種産業機械、社会インフラ設備も手掛けています。

    ・株式会社三井E&Sマシナリー ホームページ ※外部サイトへ



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  • AWS マネージドサービスプロバイダー認定

    野村総合研究所(NRI)は、AWS プレミアコンサルティングパートナーです。多数の顧客エンゲージメントや幅広い経験、顧客とのフィードバックやサクセスストーリーの収集を通じて、2013年に日本で初めて認定されて以降、9年連続で AWS プレミアコンサルティングパートナーに認定されています。

    また NRIは、2019年に「AWS マネージドサービスプロバイダー」認定(VCL 4.0)、2020年に「AWS Well-Architected パートナープログラム」認定を取得しており、コンサルティング、システム開発・運用、アナリティクスといった幅広い分野で、お客様の課題解決に AWS を活用し、DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現に取り組んでいます。



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